フォークリフトの実技試験は難しい?|切り返しが苦手なまま合格した私の話

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フォークリフト技能講習の、実技の後半。周りの人は普通にコースを回っているのに、自分だけ狭いところでの切り返しがうまくいかない。

ハンドルを切った方向と、車体の向きがどうも噛み合わない。切り返そうとして、また変な角度になる。教習所の人が横で見ている。

試験は明日か、明後日。このままで受かるんだろうか。

先に結論を書きます。受かります。

私は2017年6月に会社の指示でフォークリフトの技能講習を受けましたが、切り返しは最後まで苦手なままでした。本番でも手間取りました。それでも合格しています。

ただ、これを気休めとして受け取ってほしくありません。この記事でお渡ししたいのは、実技試験が何を見ているのかという話です。それが分かると、残った講習時間の使い方が変わります。

上手くなるな、慣れろ

実技試験が見ているのは、上手さではありません。安全です。

ここを取り違えると、残り時間の使い方を間違えます。「苦手な切り返しを克服しなければ」と思ってしまうからです。

でも、克服はしなくていい。あなたが残りの時間でやるべきことは、これです。

上手くなるな、慣れろ。

切り返しがきれいにできるようになることを目指さない。かわりに、フォークリフトのシートに座る回数を、一回でも多く増やす。

「それだけ?」と思われるかもしれません。それだけです。ただし、なぜそれでいいのかには、はっきりした理由が3つあります。

根拠1:満点を取る試験ではない

まず、採点の仕組みです。フォークリフトの実技試験は100点満点の減点方式で、70点以上で合格とされています(教習機関の公表資料による。細部は機関によって異なる場合があります)。

ここで気づいてほしいことがあります。

30点分、失敗していいということです。

制限時間もありますが、こちらも一発失格ではありません。おおむね7分程度が目安とされ、超過しても30秒ごとに数点ずつ引かれていく形が一般的です。切り返しに手間取って時間を食っても、それは「減点」で処理されます。

では、何が重く扱われるのか。その場で試験を止められかねない行為のほうです。

  • 荷物を上げたまま走行する
  • 発進・交差点などでの安全確認をしない
  • パレットや障害物に当てる
  • 始業前点検・指差し確認を省略する

並べてみると、性質がはっきりします。減点されるのは「下手さ」ではなく「危険さ」です。

切り返しがぎこちないのは、危険ではありません。時間はかかるし、多少は引かれる。でもそれは30点の枠の中で処理される種類のミスです。一方、確認を飛ばした人は、どんなに操作がなめらかでも通りません。

根拠2:そもそも落とすための試験ではない

2つ目は、この試験の立ち位置です。

フォークリフト運転技能講習は、労働安全衛生法にもとづく「技能講習」です。名前のとおり、これは講習であって、限られた合格枠を争う選抜試験ではありません。目的は、危険な機械を扱う人に必要な知識と操作を身につけさせることです。

それを裏づける事実が2つあります。

1つ目。合格率が、公表されていません。

調べてみて、これは意外でした。「合格率90%以上」「98%」といった数字はあちこちで見かけますが、そのほとんどは教習機関や業界での実感値です。国が毎年発表する統計として、はっきりした合格率の数字は見当たりませんでした。

危険物取扱者のように受験者数と合格者数が毎年公表される試験とは、性格がまるで違うということです。合格率が発表されないのは、そもそも「何割を通すか」を管理する試験ではないからと考えると腑に落ちます。

2つ目。落ちても、そこで終わりではありません。

実技が基準に届かなかった場合、多くの教習機関では補講を受けたうえで再試験を受けられます。追加費用はかかります(実技で5,000円〜1万円前後が目安、機関により異なります)。それでも、一発勝負で振り出しに戻る仕組みにはなっていない。

ここまで来ると、この試験の設計思想が見えてきます。

上手い人を選ぶのではなく、危ないことをしない人を送り出す。

根拠3:後輪操舵は「分かる」ではなく「慣れる」

3つ目は、あなたが今つまずいているもの——後輪操舵そのものの話です。

フォークリフトは後輪で舵を取ります。前輪に重い荷を載せるので、そうせざるを得ない構造になっています。この結果、自動車に慣れた体には信じられない動きをします。ハンドルを切ると、車体の後ろが大きく外へ振れる。前は思ったほど回らない。感覚がひっくり返るわけです。

ここが肝心なところです。この理屈は、読めば1分で分かります。いま読んで、分かったはずです。

それでも狭いところの切り返しはできません。これは知識の問題ではなく、運動スキルの問題だからです。

運動スキルの学習には、リチャード・シュミットが1975年に提唱したスキーマ理論という考え方があります。人は特定の動作を丸暗記するのではなく、さまざまな条件で体を動かした経験から「こう動かせばこうなる」という規則(スキーマ)を作り上げていく、というものです。

この理論から導かれる結論が、今のあなたに直接効きます。

同じ動作を1つ完璧に磨くより、条件を変えて数をこなすほうがスキーマは育つ。

狭所の切り返しは、まさにこれです。壁との距離も、進入角度も、毎回違う。「この角度ならこう」という正解を1つ暗記しても、次は使えません。必要なのは、いろいろな角度で車体を動かした経験の量です。

だから、こうなります。切り返しを頭で解こうとしない。座って、動かす。回数を稼ぐ。それが唯一の近道です。

切り返しが体に入るまでにかかる時間

——講習中のあなた。

狭いところに車体を入れようとして、また角度が合わない。切り返す。まだ合わない。後ろで順番を待っている人の視線を感じます。自分だけができていない気がしています。

ここは正直に書きます。私も同じでした。講習中、切り返しは最後まで苦手なままでした。克服して試験に臨んだのではありません。苦手を抱えたまま本番を迎えて、本番でも切り返しに手間取りました。

それでも、合格していました。

——修了証を持って、現場に出たあなた。

私は会社の指示で取った資格だったので、取得後は実際に業務でフォークリフトに乗りました。そして、そこで起きたことが答えでした。

乗っているうちに、慣れたのです。

講習の4日間でどうしてもできなかったことが、現場で毎日ハンドルを握るうちに、いつのまにか体に入っていました。狭いところに入れるとき、頭で計算しなくなります。

あ、ここで一回切ればいいのか。

——考える前に、手が動く。そういう順番に変わります。

振り返ると、講習中の私は間違った目標を持っていたのだと思います。4日間で上手くなろうとしていた。でも実際は、上手くなるのは現場に出てからでした。講習でやるべきだったのは、その入口に立つために、車体の動きに体を晒しておくことだけだったのです。

残りの講習で、一度でも多くシートに座ってください

最後に、明日からできることを書きます。

順番待ちのとき、遠慮しないでください。「もう一回いいですか」が言えるなら言う。空いているなら乗る。上手くなるためではありません。慣れるためです。

これは、当時の自分に一番言ってやりたいことでもあります。少ない時間でも、乗れば慣れる。逆に、コースの脇で他人の運転を眺めていても、後輪操舵の感覚は1ミリも身につきません。

そのうえで、試験当日に意識するのは操作ではなく確認です。

  • 始業前点検と指差し確認を、省略しない
  • 発進前・交差点で、必ず止まって左右を見る
  • 荷を上げたまま走らない
  • 焦らない(時間超過は減点で済みますが、慌てて当てると重く効きます)

この4つを守れば、切り返しがぎこちなくても点は残ります。ぎこちなさは減点、危険は失格。試験が見ている線は、そこに引かれています。

だから、もう一度だけ言わせてください。

上手くなるな、慣れろ。

上手くなるのは、現場に出てからでいい。講習で必要なのは、それだけです。

参考文献・出典

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