フォークリフトの特別教育と技能講習は何が違う?|分かれ目は、修了証が会社のものか、自分のものか

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会社からこう言われる。「フォークリフトの特別教育を受けてきて」。言われた通り申し込もうとして、案内の隅に「技能講習」という別の文字を見つける。求人票にも、この2つが別々に出てくることがある。自分が受けるのは「特別教育」でいいのか。この先、それで困ることはないのか。

検索すると、荷重の話がすぐに出てくる。「1トン未満なら特別教育、1トン以上なら技能講習」。会社が特別教育で指示してきたなら、扱う機体は1トン未満なんだろう、とは分かる。会社の指示が間違っているわけではなさそうだ。でも、それだけ分かっても、もう一段先の不安が消えない。今後のキャリアを考えたとき、このまま特別教育だけで本当に大丈夫なのか。

先に結論を書きます。特別教育は会社に紐づく記録で、技能講習は自分に紐づく資格です。会社の指示自体は、荷重が1トン未満である限り正しい。ただし、この先のキャリアまで考えるなら、知っておくべきことがあります。

結論——特別教育は会社の記録、技能講習は自分の資格

荷重で分かれるのは制度の入口。証明書が誰のものかで分かれるのは、その先のキャリアです。

今の会社で、今の業務をこなすだけなら、会社の指示通り特別教育を受けて何も困りません。けれど、転職や部署異動、あるいは「この先どちらを取っておくべきか」を考えるなら、話は変わってきます。理由を、条文の順に説明します。

特別教育は会社の記録、技能講習は自分の資格
特別教育は会社の記録、技能講習は自分の資格

まず、基本の違いを整理します

  • 対象の最大荷重——特別教育は1トン未満。技能講習は1トン以上(技能講習を持っていれば1トン未満も運転できます)
  • 実施主体——特別教育は事業者(会社)が自ら実施できます。技能講習を実施できるのは、都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関だけです
  • 講習時間の目安——特別教育は学科6時間+実技6時間の計12時間。技能講習は学科11時間+実技24時間の計35時間(普通免許があれば学科7時間+実技24時間の計31時間)
  • 修了証の交付先——特別教育の記録は会社が作成・保存します。技能講習修了証は登録教習機関から本人に交付されます

ここまでは、検索すればすぐに出てくる違いです。ただ、正直なところ、講習時間の長さはこの先のキャリアにはあまり関係ありません。大事なのは次の点です。

根拠1:特別教育の記録は「事業者」が作る、と条文に書いてある

安衛則第38条(特別教育の記録の保存)は、こう定めています。

「事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。」

記録を作って保存する義務を負っているのは、受講した本人ではなく事業者です。特別教育そのものも、安衛法第59条第3項で「事業者は…特別の教育を行なわなければならない」と定められていて、実施主体はやはり会社です。つまり特別教育は、会社が実施し、会社が記録を持つ、会社側の書類という作りになっています。転職して会社が変われば、前の会社が保存していた記録は新しい会社に自動的に引き継がれません。

根拠2:技能講習修了証は「本人」に交付される

技能講習は作りが違います。安衛法第76条第2項は、こう定めています。

「技能講習を行なつた者は、当該技能講習を修了した者に対し…技能講習修了証を交付しなければならない。」

交付される先は受講した本人です。しかも技能講習を行えるのは、安衛法第61条第1項により「都道府県労働局長の登録を受けた者」、つまり事業者ではなく登録教習機関に限られています。会社が実施するものではなく、公的に登録された機関が本人に発行する。だから修了証は会社をまたいでも、本人が持ち歩ける資格として機能します(この交付・再交付・書替えの条文は、以前の記事で1本ずつ確認済みです)。さらに安衛法第61条第3項では、業務に従事するとき、この資格を証する書面の携帯まで義務づけられています。会社の引き出しにしまっておく書類ではなく、本人が持って歩くことが前提の証明書だと分かります。

根拠3:どちらも「事業場の中」限定という土台は同じ

ここは、調べる中で見つけた、他のサイトがあまり触れていない点です。特別教育の対象業務を定めた安衛則第36条第5号には、こうあります。

「最大荷重一トン未満のフオークリフトの運転(道路交通法…の道路上を走行させる運転を除く。)の業務」

そして技能講習の対象業務を定めた安衛法施行令第20条第11号にも、まったく同じ形の括弧書きがあります。

「最大荷重…が一トン以上のフオークリフトの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務」

両方とも、「道路上を走行させる運転」をそもそも対象から除いています。1トン未満だから、1トン以上だから、という荷重の話とは別に、この2つの資格は最初から「事業場の中で荷物を運ぶ業務」だけを対象にした制度です。公道を走らせるなら、荷重に関係なく、どちらの資格を持っていても足りません。別に道路交通法上の運転免許(大型特殊・小型特殊など)が必要になります。「技能講習まで取れば公道も走れる」という発想自体が、条文の作りと合っていないのです。

今の特別教育は、無駄にならない

「今さら技能講習を取り直すのは大変そう」と思われたかもしれません。ここで一つ、安心材料があります。技能講習を定めた規程には、受講時間を短縮できる仕組みがあります。

普通自動車免許などを持ち、かつフォークリフトの運転業務に3ヶ月以上従事した経験がある人は、学科・実技の一部が免除されます。

ここでいう「フォークリフトの運転業務の経験」には、特別教育を受けて1トン未満のフォークリフトを運転していた経験も含まれます。無資格で運転していた経験を求めているわけではありません。今、特別教育を受けて現場に出ているなら、その経験がそのまま、この先技能講習に進むときの土台になります。今の特別教育は、遠回りではありません。

——分かれ目が分かった、あなたへ

——「特別教育を受けてきて」と言われたあなた。

言われた通り申し込みながらも、「技能講習」という別の文字が頭の隅に引っかかっていた。

——条文を確認したあなた。

会社の指示は間違っていなかった、と分かって、まず安心した。同時に、特別教育は会社に紐づく記録で、この先転職や部署異動があっても持ち出せるものではない、ということもはっきりした。「今後のキャリアを考えるとこれでいいのか」という不安の正体は、まさにここだった。

少し、私自身の話をさせてください。私が受けたのは技能講習のほうでした。2017年6月、会社の指示で31時間コース(学科7時間・実技24時間)を受けています。当時は「未経験者向けの長いコースなんだな」くらいにしか思っておらず、これが特別教育ではなく技能講習だったことの意味を、正直あまり意識していませんでした。今回、条文を確認して初めて、あのとき会社が指定してくれたのが「会社の記録」ではなく「自分の資格」だったと分かりました。

「会社が特別教育でいいと言うんだから、これでいいんだろう」と思われたかもしれません。今の業務をこなすだけなら、それで正しいです。ただ、今後のキャリアを考えるなら、この先技能講習も選択肢にあるということだけは、知っておいて損はありません。

もし自分が現場の担当者側だったら

ここまでは受講する側の話でしたが、逆の立場——複数の従業員に1トン未満のフォークリフトを扱わせたい担当者側の視点も書いておきます。

特別教育は安衛法第59条第3項の通り、事業者が自ら実施できます。外部の教育機関に委託することも可能です。安衛則第37条には「科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる」という規定もあります。技能講習を修了している従業員は、特別教育よりも広い範囲を学科・実技で学んでいるため、この省略の対象として扱われるのが実務上一般的です(ただし省略するかどうかの判断は事業者に委ねられています。省略できる、であって自動的に不要になる、ではありません)。

逆に、1トン以上の機体を扱わせるなら、話は変わります。安衛法第61条第1項により、技能講習を修了した者でなければ、その業務に就かせること自体ができません。「一人が技能講習を持っていれば、他の人は無資格でよい」という制度ではなく、扱う機体の重量に応じて、各人がそれぞれ必要な教育・講習を受けている必要があるという点は、担当者側として押さえておくべきところです。

今日から、確認してほしいこと

最後に、今日からできることを書きます。

会社から「特別教育を受けてきて」と言われているなら、その指示自体は間違っていません。まずは言われた通り受けてください。そのうえで、これが会社に紐づく記録であって、自分に紐づく資格ではないということだけ、頭の隅に置いておいてください。

今後のキャリアを考えるなら、そのタイミングで技能講習も選択肢に入れてみてください。今の会社に「技能講習でお願いできませんか」と相談してみるのも一つですし、転職や異動のタイミングで検討するのでも構いません。今日、何かを変える必要はありません。ただ、この先どちらを選ぶかを、自分で選べる状態にしておいてください。

参考文献・出典

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