「フォークリフト 手当」で検索して、ここにたどり着いたのだと思います。
資格を持っていなければ、会社はあなたをリフトに乗せられません。実際、毎日乗っています。荷物はあなたが動かしている。それなのに、給与明細には何の項目も増えていません。
ネットで相場を調べると、月3,000円だと書いてある記事もあれば、5,000円から1万円だと書いてある記事もあります。どこにも出典はありません。同じページの中で数字が食い違っているものまであります。読めば読むほど、うちだけ出ていない気がしてくる。
先に、いちばん知りたいであろうことに答えます。フォークリフトに手当がつきにくいのは、あなたの会社がケチだからではありません。その資格が、手当のつく型ではないからです。
ここでお渡しするのは、相場の数字ではありません。あなたの資格が「手当のつく型」なのかどうかを、今日その場で見分ける方法です。
手当がつく資格と、つかない資格を分けているもの
覚えるのはこれだけです。
受ければ受かる資格に、手当はつかない。
資格に手当がつくかどうかは、その資格が難しいかどうかでも、役に立つかどうかでもありません。その職場で、何人がそれを持っている必要があるかで決まります。
フォークリフトは、乗る人が全員持っていなければならない資格です。持っていることが職場の前提になっている。前提には、手当はつきません。全員が持っているものに上乗せしても、誰にも差がつかないからです。
一方で、その職場に一人か二人いればいい資格があります。しかも、その一人がいないと作業そのものが止まる。こちらは希少なので、会社にとっての値段がつきます。
ただし、ここに落とし穴があります。「一人でいい資格」の中にも、講習を受ければ誰でも取れてしまうものがあるのです。それは結局みんなが持ってしまうので、希少になりません。
だから見るべき線は、最終的にここに落ち着きます。受ければ受かるのか、落ちる人がいるのか。
なぜそう言い切れるのか。理由を3つ挙げます。
根拠1:法律が会社に命じているのは「乗せるな」だけ
労働安全衛生法に、こういう条文があります。
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、……技能講習を修了した者……でなければ、当該業務に就かせてはならない。(第61条第1項)
そして政令のほうに、フォークリフトの名前が出てきます。最大荷重が1トン以上のフォークリフトの運転業務(労働安全衛生法施行令第20条第11号)。
ここで気づいてほしいことがあります。この条文は、あなたに向けて書かれていません。
「事業者は……就かせてはならない」——命じられているのは会社です。あなたに「資格を取れ」と言っているのではなく、会社に「無資格の人間を乗せるな」と言っている。
だから会社は、費用を出してでもあなたに取らせます。取らせないと、会社が法律違反になるからです。あれはあなたへの投資ではなく、会社が自分の義務を果たすための手続きでした。
そう考えると、手当がつかないことのつじつまが合います。会社にとっては「持っていて当たり前」の状態を作っただけで、そこから先の上乗せをする理由がない。
もうひとつ、これは私の見立てですが——手当という名前で外に出ていないだけで、その分は時給や基本給の水準に、はじめから織り込まれているのかもしれません。無資格では就けない仕事なのですから、そこに払われている賃金は、すでに「資格を持っている人の賃金」です。ただしこれは確かめようがないので、あくまで見立てとして書いておきます。
根拠2:取らせろとは命じるが、報いろとは命じていない
では、手当のほうはどうなっているのか。
労働基準法を開いても、「資格手当」という言葉は出てきません。会社が自分で決めて規程に書いて、はじめて発生するものです。並べると、非対称がはっきりします。
- 取らせること → 法律が会社に義務づけている(安衛法61条)
- 報いること → 法律は何も言っていない
つまり会社は、あなたに資格を取らせるところまではやらされています。その先は、やってもやらなくてもいい。義務で始まった話は、義務のあるところで止まります。
手当の制度そのものの仕組み(そもそも何割の会社が出しているのか、規程に定めがあるのに払われない場合はどうなるのか)は、資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給のほうに書きました。この記事では、資格の側の話だけを進めます。
根拠3:法律自身が、資格を難易度で分けている
「一人でいればいい資格」の中に落とし穴がある、と書きました。それも条文に現れています。
同じ労働安全衛生法の中で、選任される資格の書きぶりが2種類あるのです。
- 作業主任者:「免許を受けた者又は……技能講習を修了した者のうちから……選任し」(第14条)
- 衛生管理者:「免許を受けた者……のうちから……選任し」(第12条)
作業主任者には技能講習という入口があります。フォークリフトと同じ取り方です。だから、フォークリフトを持っている人は、はい作業主任者などをすでに一緒に取っていることが珍しくありません。取りやすい資格は、結局みんなが持ちます。そして希少でなくなります。
衛生管理者のほうには技能講習の入口がありません。免許、つまり試験に受からなければ入れない。
消防法にも、同じ形があります。
……甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者で、六月以上危険物取扱いの実務経験を有するもののうちから危険物保安監督者を定め……なければならない。(消防法第13条第1項)
そしてこの資格は、全員が持つ必要がありません。
危険物取扱者以外の者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱つてはならない。(同条第3項)
有資格者が立ち会えば、無資格の人も作業できる。だから全員は要らない。それでいて、監督者は必ず一人「定め」なければならない。いなければ、その場所は操業できません。
フォークリフトとは、まったく逆の設計です。
資格の型が見えるようになったあなたの、少し先の未来
——今までのあなた。
資格の名前を聞くたびに、「それは手当がつくのか」を人に聞いていました。人によって答えが違い、ネットの相場もばらばらで、結局よく分からないまま、会社に言われたものを取ってきました。
——型で見分けられるようになった、これからのあなた。
新しい資格の話が出たとき、あなたは2つだけ確かめます。これは全員が持つやつか。そして、落ちる人がいるやつか。「講習を受ければ全員取れて、しかも現場の全員が持つ」なら、手当は期待しない。逆なら、給与規程を見に行く価値がある。
少し、私自身の話をさせてください。
私は2つの資格で、まったく違う扱いを受けました。
- フォークリフト:会社の指示で受講。費用は会社が先に負担。一時金も手当も、ゼロ
- 危険物取扱者 甲種:受験料は合格したら会社が出す。落ちた分は自己負担という条件でした。合格後に一時金5,000円と、化学系物質を扱う責任者への任命
金額の差より、条件の差のほうが気になりました。フォークリフトには、そもそも落ちるという想定がありません。会社が先に払って、受けさせて、修了する。落ちたらどうしようと思っていたのは私だけで、制度のほうは落ちることを勘定に入れていませんでした。
危険物は逆でした。落ちた分は自分の負担です。会社は受かったときにだけ払う。会社の側も、その資格には受かる人と受からない人がいると分かっていたわけです。お金の出し方が、それを表していました。
「じゃあ資格なんて取っても無駄じゃないか」と思うかもしれません。
そこは、はっきり違います。その資格がなければ、あなたはこの仕事に就けません。会社はあなたを乗せられないのですから、無資格のままでは、フォークリフトの仕事そのものが成立しない。取ったから、いまの仕事ができています。
ただ、それは手当という形では返ってこない種類の価値でした。手当という形がほしいなら、資格の型を変えるしかありません。
今日できること:職場を見回して、何人持っているか数える
今日やることは、これだけです。
同じ作業をしている人を見回して、その資格を何人が持っているか数えてください。全員なら、それは前提です。手当は期待しないでいい。
そして、次の一手が分かれます。
- 全員が持っていた場合:手当は諦めていいです。あなたが軽く見られているのではなく、その資格が前提だからです。狙うなら次の型へ
- 自分か数人しか持っていなかった場合:給与規程を見に行く価値があります。出る側にいる可能性があります
次の型を狙うなら、危険物取扱者の乙種第4類から見てください。理由は3つあります。
- 条文が「甲種……又は乙種」と書いている。監督者になるのに甲種は要りません。甲種には化学系の単位という受験資格の壁がありますが、乙4は誰でも受けられます
- 国家試験なので落ちます。だから希少になります
- 倉庫にも工場にも、塗料・燃料・アルコールがあります。あなたの職場に、その資格の置き場所がある
もっと先を見るなら、衛生管理者(免許試験。常時50人以上の事業場に選任義務があります)やボイラー技士も同じ型です。
資格は、難しさで値段が決まるのではありません。何人がそれを持っていなくて済むかで決まります。
まずは、周りを数えてみてください。
数えてみて、全員が持っていたなら、その職場でその資格が希少になることはありません。資格の側を変えるか、場所の側を変えるかの二択です。
ここで1つ、見落とされがちなことがあります。フォークリフトを使うのは、物流の現場だけではありません。製造の現場でも、原材料や製品の運搬で日常的に使います(私が乗っていたのも製造現場でした)。つまりあなたは、物流の人であると同時に、製造業の人でもあります。探せる場所は、思っているより広いということです。
場所のほうを見るなら、製造業・メーカーに特化した → 【メーカーズジョブ】
登録の前に、どんなサービスなのかを知っておきたい方へ。運営会社と、資格を持つ人に向く理由をメーカーズジョブに相談すると何がわかるか|上がらないなら、今の職場でいいにまとめました。
- 手当そのものの仕組みを知るなら → 資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給
- 次の型に進むなら → 危険物乙4の難易度|本当の壁は化学じゃなく法令だった
- さらに上を目指すなら → 危険物甲種の難易度と勉強時間|壁は「全類の性質暗記」、覚える順番で崩せる
- これから講習を受けるなら → フォークリフトの実技試験は難しい?|切り返しが苦手なまま合格した私の話
- 講習当日の服装で迷ったら → フォークリフト講習の服装|迷うのは服じゃない、頭と手だ
- その一人の席が、もう埋まっていたら → 製造業の資格手当|法律が決めているのは、金額ではなく人数だった
参考文献・出典
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)」第12条・第14条・第61条 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)」第6条・第20条 https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318
- e-Gov法令検索「消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)」第13条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186
- e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」第24条・第89条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

