フォークリフト技能講習の受講案内が届いた。学科試験について調べてみると、数字がまったく揃わない。
「問題数は30〜50問程度が一般的」と書くサイトがあれば、「40問前後」と言い切るサイトもある。「4項目から10問ずつ、合計40問」という内訳を出しているところもある。合格基準も、書いてあるところとないところがある。
どれが本当なのか。過去問で埋めようとしても、出てくるのは出典の書いていない「ネタバレ100選」のような問題集ばかりだった。
先に結論を書きます。学科試験の問題数や合格基準は、法令のどこにも決められていません。
ただし、決まっていることもあります。この記事でお渡ししたいのは、探す場所を検索結果からあなたの手元の2枚――免許証と受講案内――に移す話です。
範囲を決めているのは、あなたの免許証と受講案内だった
あなたが確認すべきことは、これです。
範囲を決めているのは、あなたの免許証と受講案内だった。
過去問を集める前に、まずこの2枚を見てください。学科試験で問われる範囲と、そもそも受ける科目の数は、そこですでに決まっています。
「調べれば調べるほど数字が割れる」で検索して来た人が、当日いちばん困るのがここだからです。理由を3つ挙げます。

根拠1:問題数も合格基準も、法令のどこにも書いていない
フォークリフト運転技能講習は、労働安全衛生法にもとづく「フォークリフト運転技能講習規程」(昭和47年9月30日 労働省告示第111号)という告示で定められています。
この告示の第4条は、修了試験について4つの項目を定めています。
- 技能講習では修了試験を行う
- 修了試験は学科試験と実技試験とする
- 学科試験は、学科講習の科目について、筆記または口述で行う
- 実技試験は実技講習の科目について行う
そして第5項。「前三項に定めるもののほか、修了試験に関し必要な事項については、厚生労働省労働基準局長の定めるところによる。」
問題数も、合格ラインも、ここでは決めていません。「労働基準局長が定める」とだけ書いてあり、その委任先の通達の原文は、厚生労働省の法令データベースにも、安全衛生情報センターの通達一覧にも見当たりませんでした。
つまり、ネットで見かける「30〜50問」「40問前後」「合計40問」という数字は、どれも告示の条文からは出てきません。教習機関ごとの運用か、受講者の伝聞のどちらかです。数字が割れて見えるのは当然でした。
根拠2:免許証で、学科の1科目が消える
問題数以前に、もっと基本的なことが法令で決まっています。受ける科目の数です。
告示第2条は、学科講習を4科目・計11時間と定めています。
| 科目 | 時間 |
|---|---|
| 走行に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 4時間 |
| 荷役に関する装置の構造及び取扱いの方法に関する知識 | 4時間 |
| 運転に必要な力学に関する知識 | 2時間 |
| 関係法令 | 1時間 |
ところが第3条には免除規定があります。普通・大型・中型・準中型自動車免許(種類を問わず、運転経験も問わず)を持っている人は、このうち「走行に関する装置」の学科が免除されます。
そして第4条第3項は「学科試験は、学科講習の科目について行う」としています。免除された科目は、講習も試験も受けません。
普通免許を持っている人の学科は3科目・計7時間。免許なしの人は4科目・計11時間。同じ「学科試験」でも、受ける科目数がそもそも違います。満点も配点も、人によって違って当然です。あなたが何科目の試験を受けるかは、過去問より先に、免許証で決まっています。
根拠3:出題も採点も、教えたその機関がする
もう1つ、見落としやすい条文があります。告示第4条第1項です。
技能講習を行なつた登録教習機関は、当該講習の課程を修了した者に対し、修了試験を行なうものとする。
技能講習を行った、その教習機関が、試験も行う。11時間の学科講習でどこを教えたかを決めているのはその機関で、試験を作るのも採点するのも同じ機関です。
だから、ネットで拾える「過去問」や「ネタバレ100選」は、それを公開した人が受けた機関の出題です。あなたが申し込んだ機関と同じとは限りません。極端に言えば、他機関の過去問を完璧に覚えても、範囲の外を勉強していることになりうるということです。
免許の有無で、コースの時間そのものも変わる
もう1つだけ、免許証が効いている場所を挙げておきます。コースの時間です。
免許・経験なしの人は、学科11時間+実技24時間で計35時間コース。普通免許を持っている人は、学科の「走行に関する装置」4時間が免除されて計31時間コース。教習所の申込ページで見かける「35時間コース」「31時間コース」の差は、そのまま告示第3条の免除規定と一致します。
問題数や合格点のような「決まっていないこと」を探す前に、コース時間や科目数という「決まっていること」を先に押さえておくと、当日の見通しが立てやすくなります。
受講案内を開いた、講習前夜の話
――受講前夜のあなた。
「フォークリフト 学科試験 過去問」で検索して、ネタバレ記事を開いては閉じている。あと何問残っているのか分からないまま、時間だけ過ぎていく。
――免許証と受講案内を開いた、これからのあなた。
過去問を探す手を止めて、免許証と受講案内を並べます。自分が受ける科目はいくつか、免除はあるか。それだけ確認して、閉じます。
少し、私自身の話をさせてください。
私は2017年6月に、会社の指示でフォークリフトの技能講習を受けました。学科試験の中身は、正直、まったく覚えていません。授業以外で自主的に勉強もしていなかったと思います。
ただ、これは私が要領よく乗り切ったという話ではありません。私が覚えていないのは、おそらく、受けた機関の学科講習がそのまま試験の範囲に収まる作りだったからだと思います。11時間の授業を聞いていれば筆記試験には対応できる――そういう機関だっただけで、私が何か特別なことをしたわけではありません。
「じゃあ結局、当日まで分からないってことか」と思われたかもしれません。
逆です。調べる場所が2つに絞れたということです。免許証と、受講案内。
受講案内で、2語だけ探してください
最後に、いま10分でできることを書きます。
受講案内か申込書を開いて、次の2語を探してください。
- 「学科試験」(何科目について行うと書いてあるか)
- 「修了試験」(学科試験・実技試験それぞれの扱い)
書いてあれば、それが範囲です。書いていなければ、電話を1本かけてください。「学科試験は難しいですか」ではなく、「私は普通免許があるので、走行の科目は免除になりますか」と聞いてください。相手が答えやすく、あなたが本当に知りたいことでもあります。
過去問は、それからでも遅くありません。
だから、もう一度だけ。
範囲を決めているのは、あなたの免許証と受講案内だった。
過去問を探す前に、その2枚を開いてください。
フォークリフトの技能講習について、他にも書いています。当日の服装で困りたくない人はフォークリフト講習の服装|服の規定は緩い。割れるのはヘルメット・手袋・靴の3点、実技のほうが不安な人はフォークリフトの実技試験は難しい?|切り返しが苦手なまま合格した私の話へ。取得後、資格手当がつかないことに気づいた人はフォークリフトに手当はつく?|法律が命じているのは「取らせろ」だけだったで理由を書きました。
参考文献・出典
- 厚生労働省「フォークリフト運転技能講習規程」(昭和47年9月30日 労働省告示第111号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74142000&dataType=0&pageNo=1

