「資格手当 ない会社」で検索して、ここにたどり着いたのだと思います。
資格を取った。合格通知も届いた。会社からお金も出た。それなのに、翌月の給与明細を見ても、手取りはいつもと同じでした。あの資格は、給料に反映されていない。
あるいは、これから受けようとしていて、先に調べてしまったのかもしれません。同期は「うちは資格手当が月1万円出る」と言っている。自分の会社の給与明細には、そんな欄がない。うちの会社、おかしいんじゃないか。
先に、いちばん知りたいであろうことに答えます。資格手当がない会社は、違法ではありません。そして、珍しくもありません。厚生労働省の調査では、資格に関する手当を出している企業は全体の半分程度です。
ですからこの記事でお渡しするのは、会社への不満でも、転職の勧めでもありません。あなたの資格が「昇給」に効くのか、それとも効かないのかを、今日のうちに確かめる方法です。
資格でお金が増える道は、2本ある
覚えるのはこれだけです。
給与規程を開く。資格手当の条項がなければ、その資格は昇給には効かない。
「資格を取るとお金がもらえる」と、私たちはひとまとめに言います。ですが会社の制度として見ると、これはまったく性質の違う2本の道です。
ひとつは一時金。合格報奨金、合格祝い金と呼ばれることもあります。受かったときに1回だけ支払われて、それで終わりです。
もうひとつが資格手当。毎月の給与に上乗せされて、その資格を持っている限り払われ続けます。
混同されやすいのですが、年収への効き方が正反対です。一時金は、その年の収入を一度だけ押し上げて、翌年には消えます。昇給ではありません。資格手当は、月額が小さくても12か月ぶん、そして在籍している年数ぶん積み上がります。こちらが昇給です。
そして重要なのは、一時金を出す会社が、資格手当も出しているとは限らないということです。片方だけの会社があります。私がいた会社が、まさにそれでした。
なぜ「規程を開く」だけでいいのか。理由を3つ挙げます。
根拠1:資格手当を払えという法律は、どこにもない
労働基準法を開いても、「資格手当」という言葉は出てきません。
法律が会社に求めているのは、常時10人以上を使用する場合に就業規則を作り、その中に「賃金の決定、計算及び支払の方法……並びに昇給に関する事項」を書くことです(労働基準法第89条第2号)。何をいくら払うかまでは、法律は決めていません。
つまり資格手当は、会社が自分で決めて、規程に書いて、はじめて発生するものです。書いていなければ存在しません。だから、ない会社があるのは制度の欠陥ではなく、そもそもそういう設計だということになります。
そしてもう一つ、条文を読んでいて気づいたことがあります。法律のほうも、月々の手当と一時金を、はじめから別の箱に入れています。
労働基準法第24条は「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めていますが、そのすぐあとに、ただし書きが続きます。臨時に支払われる賃金は、この限りでないと。合格したときの一時金は、この「臨時の賃金等」にあたります。毎月払わなくてよいもの、として最初から仕分けられているわけです。
就業規則の書き方も同じです。月々の賃金は必ず書かなければならない事項ですが、臨時の賃金等は「定めをする場合においては」書く、という条件付きの扱いになっています(同法第89条第4号)。
私たちが「資格を取ったらお金が出る」と一括りにしているものを、法律は最初から2つに分けている。感覚のほうが、あとから追いついていないのです。
ここで、はっきり分けておきたいことがあります。
- 規程に定めがない → 支払われなくても、違法とは言えません
- 規程に定めがあるのに払われない → これは話が別です。労働基準法第24条は、賃金は全額を支払わなければならないと定めています
「資格手当がもらえない」と検索する人の中には、この2つが混ざっています。あなたがどちらなのかは、規程を見ないと分かりません。だから最初にやることが「開く」なのです。もし後者だと分かった場合は、この記事の範囲を超えます。労働基準監督署や社会保険労務士など、条文にあたれる相手に相談してください。
根拠2:出している会社は、半分ちょうどくらい
厚生労働省の「就労条件総合調査」(令和7年)に、諸手当の種類別の支給企業割合が載っています。
「技能手当、技術(資格)手当など」を支給している企業は、全企業の48.5%でした(令和6年11月分)。5年前の同じ調査では43.8%です。少しずつ増えてはいますが、いまだに半分を超えていません。
この数字の読み方には注意が必要です。この区分は資格手当だけを数えたものではなく、技能手当や技術手当も含みます。ですから「資格手当がある会社」は、48.5%よりさらに少ないと考えるのが自然です。
比較のために並べると、通勤手当などは90.2%、役付手当などは84.2%です。ほとんどの会社にあるこれらと違って、資格に対する手当は「あったらラッキー」の側にあるということになります。
もうひとつ、意外だったことがあります。会社の規模で、あまり変わりません。
諸手当を支給している企業の中での割合を規模別に見ると、1,000人以上が53.1%、300〜999人が57.5%、100〜299人が56.9%、30〜99人が51.3%。どの規模でも5割台で、大企業ほど手厚いという傾向が出ていません。実際この調査でも、規模が大きいほど支給割合が高くなる手当として名前が挙がっているのは住宅手当や単身赴任手当などで、技能・技術(資格)手当は挙がっていません。
「大きい会社に行けば資格手当がある」とは、この数字からは言えないということです。規模ではなく、その会社が決めたかどうか。それだけで決まっています。
あなたの会社にないのは、あなたの会社が特別にケチだからではありません。半分はそちら側です。
根拠3:手当がある会社では、1年で一時金に追いつく
同じ調査には、支給額も載っています。「技能手当、技術(資格)手当など」を受け取っている人の平均は、月21.5千円でした(令和6年11月分)。
12か月で25万8千円です。
この数字を初めて見たとき、私は少し黙りました。というのも、私がPMPに合格したときに会社から出た一時金が、ちょうど25万円だったからです。
25万円は、決して少なくありません。振り込まれたときは素直に嬉しかったし、報われた気がしました。ですが手当のある会社に勤めている人は、同じ額をたった1年で受け取り、そして2年目もまた受け取ります。3年目も、5年目も続きます。
一時金は大きく見えて、一度きりです。手当は小さく見えて、止まりません。「資格を取れば年収が上がる」という言葉が指しているのは、後者のほうです。
自分の会社の制度を知っているあなたの、少し先の未来
——今までのあなた。
資格の勉強を始めるとき、頭のどこかで「これでいくら上がるんだろう」と考えていました。ですが具体的な数字は誰も教えてくれず、合格して、お金が出て、それきりでした。上がったのか上がっていないのかも、はっきりしないままです。
——給与規程を開くようになった、これからのあなた。
次に受ける資格を選ぶとき、あなたは先に規程を確認します。対象資格の一覧に載っていれば、月いくらかも分かります。「この資格は、うちだと月5千円。10年いれば60万円か」。取る前に、金額が見えている。
少し、私自身の話をさせてください。
私は2社を経験しましたが、どちらにも資格手当という制度がありませんでした。一時金は出ます。PMPで25万円、危険物取扱者の甲種で5千円。金額はまるで違いますが、性質は同じでした。1回きりです。
正直に言えば、当時の私はその違いを分かっていませんでした。お金が出た時点で「報われた」と思って、それ以上調べなかったのです。調べていれば、資格の選び方も、その後の身の振り方も違っていたかもしれません。
「どうせうちの会社は変わらない」と思うかもしれません。そのとおりです。規程を読んだからといって、会社に手当ができるわけではない。
ですが、変わらないと分かることには意味があります。期待しながら勉強を続けるのと、期待できないと知ったうえで別の使い道を決めるのとでは、同じ資格でも行き先が変わります。
今日できること:給与規程の目次を、上から見る
今日やることは、これだけです。
社内ポータルか就業規則の綴りから、給与規程(賃金規程)を開いて、手当の章を見てください。資格手当、技能手当、技術手当——名前は会社によって違います。ないなら、ありません。5分で終わります。
そして、結果によって次の一手が分かれます。
- あった場合:対象資格の一覧を見てください。次に何を受けるかは、その一覧から選ぶのがいちばん確実です
- なかった場合:あなたの資格を収入に変える道は、社内には残っていません。一時金の制度があるなら取りこぼさないこと。そのうえで、その資格が手当の対象になる会社を見ておくこと。この2つです
後者は、いますぐ辞めろという話ではありません。同じ資格が、会社によって月2万円になったり、0円になったりする。それが事実だと知っておくだけで、次に動くときの判断材料が1つ増えます。
資格は、取った瞬間に価値が決まるものではありません。どこで使うかで、金額が決まります。
まずは、規程を開いてください。
規程に条項が無かったとしても、いますぐ辞めろという話ではありません。ただ、同じ資格が手当の対象になる会社はあるということは、知っておいて損はありません。製造業・メーカーに絞って、いまの経験がいくらになるのかを見てみたいなら → 【メーカーズジョブ】
登録の前に、どんなサービスなのかを知っておきたい方へ。運営会社と、資格を持つ人に向く理由をメーカーズジョブに相談すると何がわかるか|上がらないなら、今の職場でいいにまとめました。
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参考文献・出典
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況(賃金制度)」第17表・第18表 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/dl/gaiyou02.pdf
- 厚生労働省「就労条件総合調査 結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23c.html
- e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」第24条・第89条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

