危険物甲種のテキスト|主役は問題集、テキストは引く本

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危険物甲種のテキストを探すと、市販されているものだけで十数冊出てきます。どれも「わかりやすい」と書いてあり、レビューはどれも星4前後。そうやって比べているうちに、買う前から疲れてきていませんか。

しかも甲種は、乙4のときの本が使えません。出題範囲が第1類から第6類までの全類に広がるので、テキストは買い直しになります。だからこそ「今度こそ失敗したくない」と、比較の沼が深くなります。

この記事では、比べる前に決めておくべきことをひとつだけお伝えします。そもそも、テキストは比べる主役ではありません。

「一番わかりやすい1冊」を探しても、たぶん読み切れない

甲種のテキストを開くと、第1類から第6類までの物質名がずらりと並んでいます。過塩素酸塩類、黄りん、有機過酸化物。初めて聞く名前が何十と続きます。

この状態で「わかりやすい本なら読み通せるはずだ」と考えるのは、少し無理があります。わかりやすさは、量の問題を解決してくれないからです。実際、テキスト選びで悩んでいる時間が長い人ほど、買ったあとに最初の数十ページで止まりがちです。

問題は本の質ではありません。テキストを「読む本」だと思って選んでいることです。

解決策:主役は問題集。テキストは引く本

買う順番を逆にしてください。先に問題集を1冊決めて、テキストはそれを解いていて詰まったときに引く本として選ぶ。これだけで、選ぶ基準が「読みやすさ」から「引きやすさ」に変わります。

合言葉はこれです。

主役は問題集。テキストは引く本。

テキストを辞書だと思ってください。辞書を最初から最後まで読む人はいません。必要になったときに引くから、分厚くても平気なのです。

テキストを「引く本」として選んでいい3つの理由

理由①:出題構造が「穴を潰す作業」を要求している

甲種の出題は、法令15問・物理学及び化学10問・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法20問の計45問です。試験時間は2時間30分、五肢択一式。45問のうち20問、つまり4割以上が性質・消火で、ここに全類の物質が入ってきます。

乙種と並べると、増えた場所がはっきりします。乙種は法令15問・物理化学10問・性質消火10問の計35問。法令と物理化学の問題数は甲種とまったく同じで、性質・消火だけが10問から20問へ倍になっています。甲種が重いのは全科目が重いからではなく、この20問のためです。

そして甲種には科目ごとに60%以上という合格基準があり、乙種にあるような科目免除もありません。得意な科目で稼いで苦手を隠す戦い方ができない試験です。つまり合格までにやることは、はっきりしています。自分の穴がどこにあるかを見つけて、そこだけを潰す。この作業を進める道具は、テキストではなく問題集です。

覚える順番そのものについては、類ごとの共通性質を先に押さえてから個別を潰すという手順を別の記事に書きました。テキストはその手順の中で、詰まった箇所を確認するために開くことになります。

理由②:読むより、思い出すほうが記憶に残る(生成効果)

心理学にスラメカとグラフが1978年に報告した「生成効果」という現象があります。単語を与えられてそのまま読んだ人より、手がかりから自分で答えを作り出した人のほうが、あとで記憶に残っていたというものです。同じ材料を扱っても、受け取る側にいるか、作り出す側にいるかで、定着の度合いが変わります。

テキストを読むのは受け取る側の作業で、問題を解くのは作り出す側の作業です。同じ2時間を使うなら、作り出す側に置いたほうが得だということになります。テキストが要らないという話ではありません。順番が逆だと損をする、という話です。

理由③:「1冊で全部そろう」という前提は、もともと崩れている

これは書店の棚を見るとわかります。弘文社の『わかりやすい!甲種危険物取扱者試験』には、『甲種危険物受験の為の わかりやすい物理・化学』という姉妹編があります。物理学及び化学だけに絞った、独立した1冊です。

10問しか出ない科目のために、専用の本が1冊成立している。これは、テキスト1冊ですべてをまかなう前提がもともと成り立っていないことを、出版社の側が認めているということです。

なぜ10問のために1冊が要るのか。答えは、公式が使っている科目名そのものにあります。乙種のその科目は「基礎的な物理学及び基礎的な化学」。甲種は「物理学及び化学」です。甲種では、科目名から「基礎的な」が外れます。問題数は10問のまま変わらないのに、求められる深さだけが上がる。ここに専用の本が生まれる理由があります。

だとすれば、探すべきは「完璧な1冊」ではありません。自分の穴が見えてから、そこに合う本を足す。そして穴は、問題を解かないと見えません。ここでも順番は同じです。

索引を引く手が速くなっていく、少し先のあなた

——今までのあなたは、レビューの星の数を見比べては閉じ、まだ1問も解かないまま日が過ぎていたかもしれません。

——問題集を主役にしたこれからのあなたは、机の上で問題集を1問ずつ潰しています。手が止まったら、テキストの索引からその物質を引く。同じ物質を2回引いたら、それが自分の穴だとわかる。読み通す義務から解放されているぶん、進みが速い。そしてこう気づくはずです。

「読み終わってから始めるつもりだったけど、解きながらのほうが早かったな」

少し、私自身の話をさせてください。私が甲種を受けたときも、この形でした。乙4のテキストは使わず、甲種用にテキストと問題集を買い直し、ひたすら問題集を解いて、わからないところをテキストで確認する。やったのはそれだけです。

ちなみに、テキストと問題集の出版社は揃えていませんでした。別々に選んだ2冊です。それでも困らなかったのは、テキストを引く道具として使っていたからだと思います。引ければいいので、表紙が揃っている必要はありませんでした。乙4を先に受けてから3ヶ月半後、甲種に一発合格しています。

今日できること:問題集を先に1冊決める

手順は3つです。

1つ目。問題集を1冊決めてください。過去問をたくさん解きたいなら過去問集、要点と問題を行き来したいなら精選問題型です。ここを最初に決めるのが、この記事でいちばん伝えたいことです。




このとき、必ず最新版を選んでください。危険物の試験は法令が出題の3分の1を占め、その法令は改正されます。年度が入った本が毎年出ているのは、中身が動くからです。中古で1つ前の年度版を安く買うのは、法令15問を古い地図で解きにいくことになります。

2つ目。テキストを1冊決めてください。選ぶときに見るのは、文章の読みやすさよりも索引と物質の並びです。目次だけでなく巻末の索引を確認して、物質名から逆に引けるかどうかを見てください。動画とセットで確認したい人には、講義動画と連動したタイプもあります。

テキストと問題集が1冊になった「一体型」も出ています。荷物を増やしたくないなら、それでも構いません。ただしその場合も、開く場所は問題のページからです。一体型を買った人がつまずくのは、本の作りではなく「前から読む」という開き方のほうです。




3つ目。物理学及び化学に不安があるなら、そこだけ足してください。先ほどの科目名のとおり、乙4から甲種で「基礎的な」が外れるのはこの科目だけです。高校で化学を離れて久しい人ほど、ここに専用の1冊を足す価値があります。逆に、問題集を解いてみて物化で困らないなら不要です。買うかどうかは、解いてから決められます。


3冊すべてを最初に買う必要はありません。まず問題集を1冊。それを解き始めれば、自分の穴が勝手に見えてきます。テキストは、そのときに引くために置いておけばいい本です。

比べるのをやめて、1冊目を決めてください。読み終わるのを待たなくても、勉強はもう始められます。


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テキスト代と数か月を投じる前に、合格後に何が返ってくるかも見ておくと迷いが減ります。私の場合は一時金5,000円と、化学系物質を扱う責任者という役割でした。月額の資格手当はゼロです。しかも消防法が求める危険物保安監督者の要件は甲種または乙種+実務6か月で、選任するだけなら乙4で足ります。甲種にいくら払うかは法律ではなく、会社の給与規程が決めています。 → 資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給

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参考文献・出典

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