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危険物取扱者の甲種を受けようと調べはじめて、最初にぶつかるのが「受験資格」ではないでしょうか。乙種や丙種は誰でも受けられるのに、甲種だけは条件を満たした人しか受けられない。そして条件の一番上に書いてあるのが「大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者」です。
ここで卒業証書に書かれた自分の学科名を思い出して、「うちの学科は化学系じゃないな」とページを閉じていませんか。その判断、まだ早いかもしれません。消防試験研究センターは、名前に「化学」の字が入っていない学科を107件も名指しして、「化学に関する学科」だと認めています。この記事では公式資料をたどりながら、学科名で降りる前に確かめておくことをお伝えします。
甲種だけが、受ける人を選ぶ試験になっている
危険物取扱者試験のうち、乙種と丙種に受験資格はありません。年齢も学歴も実務経験も問われず、申し込めば誰でも受けられます。ところが甲種だけは違い、決められた条件のどれかを満たした人しか受験できません。
つまり甲種を目指すとき、最初の関門は勉強ではなく「自分は受けられるのか」の確認です。そしてここが厄介なところなのですが、多くの人はこの確認を、願書も証明書も見ないまま、卒業証書の学科名を思い出すだけで済ませてしまいます。
この確認を間違えて「受けられない」側に倒したとき、失うのは受験料ではありません。受けられたはずの何年かが、そのまま過ぎていきます。

解決策:思い出すのをやめて、公式の一覧と照らす
甲種の受験資格には5通りの入口があります。そして公式は、どの学科名・どの科目名が該当するかを一覧にして公開しています。学科が107件、授業科目が386件。まず自分の学科名をその一覧で探し、なければ成績証明書を広げて科目を数える。判定はあなたの記憶ではなく、この2つの紙の上で決まります。
やることは、思い出すことではありません。照らし合わせることです。合言葉はこれだけ覚えてください。
思い出すのをやめて、公式の一覧と照らす。
学科名は入口のひとつにすぎません。そしてその入口自体、あなたが思っているよりずっと広く取られています。
学科名で降りなくていい4つの理由
理由①:ルートと「出す紙」が1対1で決まっている
消防試験研究センターの公式ページには、受験資格が次のように整理されています。公式の区分は〔1〕〜〔4〕の4つですが、〔3〕の乙種免状のルートだけが「実務2年」と「4種類」の2通りに分かれるので、実際の入口は5通りです。それぞれに「願書のどの欄に何と書くか」まで決められているのが特徴です。
| 受験資格 | 願書に書く略称 | 必要な証明書類 |
|---|---|---|
| 大学等で化学に関する学科・課程を卒業 | 大学等卒 | 卒業証明書、卒業証書、学位記(いずれも学科名が明記されたもの) |
| 大学等で化学に関する授業科目を15単位以上修得 | 15単位 | 単位修得証明書、または修得単位が明記された成績証明書 |
| 乙種免状の交付後、実務経験2年以上 | 実務2年 | 乙種危険物取扱者免状+乙種危険物取扱実務経験証明書(事業主等の証明) |
| 乙種免状を4種類以上取得 (第1類か第6類/第2類か第4類/第3類/第5類) |
4種類 | 乙種危険物取扱者免状 |
| 修士・博士の学位(化学に関する事項を専攻) | 学位 | 学位記等(専攻名が明記されたもの) |
この表で確認してほしいのは、どのルートにも「出す紙」が決まっていて、そこに解釈の余地がないということです。受験資格の有無は、あなたがどう思っているかではなく、その紙を用意できるかどうかで決まります。だからこそ、頭の中で「たぶん自分は無理だろう」と結論を出す場所は、そもそもどこにもないのです。
ちなみに、過去に甲種の受験を申請したことがある人は、そのときの受験票または試験結果通知書を提出することで、証明書類の代わりにできます。一度どこかで資格を認められていれば、二度目からは紙を取り直さなくていい、ということです。
もうひとつ、表に収まりきらない但し書きがあります。専修学校(専門学校)で「大学等卒」や「15単位」を使う場合は、修業年限2年以上かつ総授業時数1700時間以上の専門課程に限られ、卒業証明書などとは別に、専門士・高度専門士の称号が付与されたことを証明する書面が要ります。高等専門学校の15単位は専門科目に限るとされているので、一般科目で取った化学は数えられません。高等学校・中等教育学校の専攻科は修業年限2年以上のものだけです。どこを出たかによって、必要な紙が1枚増えることがあります。
理由②:公式は107の学科名を名指ししている。しかも全部「化学」の字が入っていない
「化学に関する学科」と聞くと、応用化学科や工業化学科のような、名前に化学の字が入った学科を思い浮かべます。ところが公式ページ「化学に関する学科又は課程」を開くと、名前に化学の字が入る学科は1件も載っていません。載っているのは、それ以外の107件です。
理由は単純で、名称の一部に「化学」の字句が含まれる学科は説明なしで該当するため、わざわざ並べる必要がないからです。つまりこの107件は、「化学の字が入っていないのに、公式が化学に関する学科だと認めている学科」の名簿ということになります。いくつか挙げます。
- 工学系 … 安全工学科、材料工学科、金属工学科、高分子工学科、原子力工学科、無機材料工学科、窯業工学科、繊維工学科、素材工学科、プロセス工学科
- 農・食・林系 … 食品科学科、食品工学科、醗酵工学科、生物資源科学科、森林資源科学科、林産学科、林産工学科
- 薬学系 … 薬学科、薬科学科、製薬学科、医療薬学科、衛生薬学科、薬品科学科
- その他 … 冶金学科、塗装科、色染工芸学科、工業材料科、基礎理学科、マテリアル工学科
「塗装科」まで入っています。化学とは無関係だと思っていた学科名が、この一覧の上で見つかることは珍しくありません。だから最初にやるのは、思い出すことでも数えることでもなく、この一覧を開いて自分の学科名を探すことです。
ここで、よくある勘違いをひとつ片づけておきます。薬剤師の免許は、甲種の受験資格ではありません。公式が挙げる受験資格は〔1〕〜〔4〕の4区分だけで、そこに国家資格の名前は一切出てきません。ただし薬学系の学科名は、上のとおり一覧に載っています(全部で12件)。薬学部を出た人が甲種を受けられるのは、薬剤師だからではなく卒業した学科の名前が一覧にあるからです。出すのは免許証ではなく、卒業証明書のほうになります。
理由③:15単位ルートは、想像よりずっと間口が広い
「15単位」と聞くと、化学を専門にしていた人だけの話に見えます。ところが公式のチェック表を読むと、その中身はかなり広く取られています。単位の数え方として、次の3つが認められているのです。
- 科目名に「化学」の字句が含まれる授業科目(例:化学工学、環境化学)
- センターのホームページに載っている「化学の授業科目(例)」と同じ科目
- 大学等が発行する「化学に関する授業科目の単位修得証明書」で認められる科目
2つ目の「ホームページに載っている科目」は、学科の一覧とまったく同じ構造をしています。「化学の授業科目例」に並ぶ386件のうち、名前に「化学」の字が入っているものは1件もありません。量子力学、栄養学、公衆衛生学、微生物学、半導体工学、土壌学、燃焼工学、単位操作、機器分析、レオロジー——化学の授業を受けたつもりのなかった科目が、そのまま数えられます。しかも公式は、前後に「基礎・応用・論・序論・理論・各論・概論・特論」が付いたものは同一の授業科目とみなしてよい、とまで書いています。
そして、これらは組み合わせて合計15単位あればよいとされています。さらに3つ目については、公式のチェック表にこう明記されています。
大学が化学に関する分野と認めた授業科目は、すべて該当します。
つまり、化学と呼べるかどうかの最終的な判断は、あなたでも試験センターでもなく、単位を出した大学の側にあるということです。科目名がぴんと来なくても、大学が化学の分野だと認めれば、それは15単位の一部として数えられます。
もうひとつ、見落とされがちな条件があります。この15単位は、卒業・在学中・中途退学・通信教育のいずれであっても算定できるとされています。放送大学で修得した単位も同様です。大学を途中でやめた人も、いま在学中の人も、通信で学び直している人も、条件から外れていません。
15単位という数字も、1科目2単位で数えるなら8科目ぶんです。理工系や農学系、薬学系、あるいは一般教養で化学系の科目をいくつか取っていた人なら、成績証明書を広げて数えたときに届いていることは十分にありえます。
理由④:字面のトラップがあるから、自己判断が一番危ない
ここまで読むと「じゃあ科目名に化学と入っていればいいんだな」と思えますが、公式はそこにも但し書きを付けています。チェック表には、名称に化学の字句が含まれていても除かれる例として、学科では「人類文化学科」、科目では「進化学」が挙げられています。文字の並びとしては化学が入っていても、化学の分野ではないからです。
逆方向の但し書きもあります。例示された学科に似ていると思われる学科については、受験を予定している支部等へ問い合わせるようにと書かれています。境界線上にいる人は、自分で判定せず聞いてください、という設計です。
そして学科名で該当しなかった人に対して、公式のチェック表はご丁寧にこう案内しています。「化学に関する科目15単位以上修得(チェック表B)した受験資格での確認もご検討ください」。学科名で外れた人がそこで諦めることを、試験を実施する側が想定して、次の入口を示しているわけです。
字面だけで判断すると外れる例があり、似ていれば問い合わせろと言われ、外れたら別ルートを検討しろと案内される。この試験の受験資格は、受験者が自分の頭の中だけで結論を出す設計になっていないのです。
成績証明書に丸をつけながら数える、少し先のあなた
——今までのあなたは、甲種のページを開くたびに卒業証書の学科名を思い出して、「たぶん違うな」とタブを閉じていたかもしれません。受けたい気持ちだけが、行き場を失って残っていたはずです。
——成績証明書を取り寄せたこれからのあなたは、届いた紙を机に広げ、鉛筆を持って科目名を上から追っていきます。化学の字が入る科目に丸を付け、単位数を足していく。ちなみにこの丸を付ける作業は私の思いつきではなく、公式が「該当する教科と単位数に鉛筆等で丸印を付けてください」と指示している、実際の申請作業です。そして数え終えたあなたは、こう言っているはずです。
「なんだ、足りてるじゃないか」
少し、私自身の話をさせてください。私は化学系の大学を出ているので、受験資格は最初からありました。大学に卒業証明書の発行を頼み、即日で受け取って、それを添えて申し込んだ。それだけです。迷った場面はひとつもありませんでした。
だからこの点について、私は胸を張れる側ではありません。たまたま分かりやすいレーンに立っていただけです。ただ、そのおかげで断言できることがひとつあります。受験資格の確認そのものは、紙を1枚用意すれば終わる手続きだということです。何ヶ月も悩むような重さは、この作業のどこにもありません。重いのは、確かめないまま抱えている「たぶん無理だろう」のほうです。
今日できること:公式の一覧で、自分の学科名を探す
今日やることは3つです。
1つ目。公式ページ「化学に関する学科又は課程」を開いて、自分の学科名が107件の中にあるか探してください。あれば、そこで終わりです。受験資格は「大学等卒」で確定し、用意する紙は卒業証明書1通になります。名前に「化学」の字が入っている人も、一覧を見るまでもなく確定です。
2つ目。一覧に見当たらなかった人は、出身校の証明書発行のページを開いて、成績証明書を1通申し込んでください。数えて足りていれば、あなたの受験資格は「15単位」で確定します。
3つ目。願書の「甲種受験資格」欄に書く略称を、大学等卒・15単位・実務2年・4種類・学位の5つから1つ選んでください。ここが決まれば、用意する紙は自動的に決まります。受験の申し込みは書面でも電子申請でもできますが、令和10年度からは原則として電子申請のみになる予定なので、これから受ける人は電子申請に慣れておいて損はありません。
大学等での単位がどうしても届かない人には、乙種から積み上げる道が残っています。乙種免状を4種類(第1類か第6類、第2類か第4類、第3類、第5類)そろえるか、乙種免状を取ってから2年の実務経験を積むかです。この場合も、扉が閉まっているわけではありません。順番が変わるだけです。
学科名は、あなたが甲種を受けられるかどうかを決める唯一の基準ではありません。そして学科名で決まる場合ですら、決めているのはあなたの記憶ではなく、公式が公開している一覧のほうです。照らしてみてから、降りるかどうかを考えてください。
あわせて読むと、危険物取扱者の対策に役立つ記事:
- 受験資格を確認できたら、次は本選び → 危険物甲種のテキスト|主役は問題集、テキストは引く本
- 甲種の難易度と勉強時間を知りたいなら → 危険物甲種の難易度と勉強時間|壁は「全類の性質暗記」、覚える順番で崩せる
- いきなり甲種を受けるか迷っているなら → 危険物甲種はいきなり受けていい?|化学系出身の私があえて乙4を先に受けた理由
- 乙種から積み上げる道を選ぶなら → 危険物乙4の難易度|本当の壁は化学じゃなく法令だった
受験資格を満たすために単位や実務経験を積むなら、その先に何が返ってくるのかも見ておいて損はありません。私の場合は一時金5,000円と、化学系物質を扱う責任者という役割でした。月額の資格手当はゼロです。消防法が会社に命じているのは危険物保安監督者を「定める」ことで、その要件は甲種または乙種+実務6か月。つまり選任するだけなら乙4で足ります。甲種にいくら払うかを決めているのは法律ではなく、会社の給与規程のほうです。 → 資格手当がもらえないのは、2社に1社|違法になるのは「規程にあるのに払わない」ときだけ
受験資格のハードルを越えて甲種を取っても、いまの職場では乙4と同じ扱いかもしれません。場所のほうを見てみたいなら、製造業・メーカーに特化した転職エージェントもあります → 【メーカーズジョブ】
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参考文献・出典
- 消防試験研究センター「甲種危険物取扱者試験の受験資格」 https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/qualified.html
- 消防試験研究センター「甲種 化学に関する学科又は課程」 https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/qualified02.html
- 消防試験研究センター「甲種 化学の授業科目例」 https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/qualified03.html
- 消防試験研究センター「危険物取扱者試験 受験申請の手引き」 https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/application.html

