簿記2級のテキストは2冊|決め手は、工業簿記

簿記・FP

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簿記3級に受かって、そのまま2級へ。テキストを買おうとして、最初の一歩で止まります。

本が、2冊ある。

3級のときは1冊選べば終わりでした。ところが2級の棚に行くと、同じシリーズなのに「商業簿記」と「工業簿記」に分かれています。両方買うのか、どちらかでいいのか。そもそも、どのシリーズにするのか。

検索しても「おすすめ5選」「人気ランキング」が並ぶばかりで、何を基準に決めればいいのかは書かれていません。

この記事でお渡しするのは、おすすめの本のリストではありません。2冊のうち、どちらを見て決めればいいかという基準です。それが決まれば、選ぶのは一度で終わります。

決め手は、工業簿記

覚えるのはこれだけです。

テキストは2冊。決め手は、工業簿記。

まず結論から。簿記2級のテキストは、商業簿記と工業簿記を2冊とも買います。どちらかで済ませることはできません。試験に両方出るからです。

そのうえで、シリーズを決めるときに見るのは、工業簿記のほうです。

多くの人は商業簿記の本をめくって「読みやすそう」と判断します。3級の続きなので、比べやすいからです。ですがその判断は、いちばん差がつかないところで下されています。

なぜ工業簿記が決め手になるのか。理由を3つ挙げます。

根拠1:工業簿記の40点は、落とすと商業簿記に跳ね返る

まず配点の話をします。

ここは正確に書いておきます。商工会議所の公式ページが明記しているのは、試験科目は商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)、5題以内、90分、合格基準70%以上——ここまでです。「商業簿記60点・工業簿記40点」という配点そのものは、公式には書かれていません。

ただ、第1問〜第3問が商業簿記、第4問・第5問が工業簿記という形は長く定着しています。この前提で計算すると、工業簿記の重みがはっきりします。

工業簿記(40点満点)の出来 合格の70点に届くには、商業簿記(60点満点)で
40点(満点) 30点=50%でよい
30点 40点=67%
20点(半分) 50点=83%が必要

工業簿記を半分落とすと、商業簿記で8割以上取らないと受かりません。商業簿記は範囲が広く、連結会計のような重い論点も含みます。そこで83%を狙うのは、現実的とは言えません。

逆に工業簿記で満点近くを取れれば、商業簿記は半分で足ります。40点は「おまけの4割」ではなく、合否をひっくり返す4割です。

根拠2:3級から地続きでないのは、工業簿記だけ

次に、中身の話です。

商業簿記は、3級の延長線上にあります。仕訳を切って、勘定に集めて、決算で締める。この流れは3級で身体が覚えているので、2級で増えるのは論点の数であって、考え方そのものではありません。だから、どのシリーズを読んでも大きくは変わりません。

工業簿記は違います。ここだけ、まったく新しい科目です。

材料や賃金が仕掛品に入り、製品になって、売上原価に出ていく。この「原価の流れ」は3級には出てきません。しかも厄介なことに、1つの論点を理解しても、全体の位置関係が見えていないと次で迷子になります。

私は別の記事で、工業簿記でつまずく原因は勘定連絡図という「地図」を持っていないことだと書きました。この地図をどれだけ早く、どれだけ自然に持たせてくれるか。そこがテキストによって本当に差が出るところです。

差が出ない科目の本で選び、差が出る科目の本を「ついてきたもの」として受け取る。順番が逆です。

根拠3:商業簿記と工業簿記は、同じシリーズで揃える

最後に、組み合わせの話です。

「商業簿記はA社、工業簿記は評判のいいB社」と混ぜたくなることがあります。おすすめしません。

シリーズが違うと、図の描き方と用語の選び方が変わります。とくに工業簿記は図で理解する科目なので、勘定連絡図の描き方が本によって微妙に違います。2つの流儀が頭に入ると、せっかくの地図が2種類になってしまいます。

商業簿記と工業簿記はつながっています。工業簿記で計算した製品原価は、商業簿記の売上原価として財務諸表に載ります。同じシリーズなら、この接続を同じ言葉で説明してくれます。

つまり手順はこうなります。工業簿記の本で決める。決めたら、同じシリーズの商業簿記を一緒に買う。

定番3シリーズ:あなたはどのタイプ?

ここから具体名を挙げます。3級のときと同じ3シリーズです。3級でどれかを使っていて相性が良かったなら、そのまま2級に上がるのがいちばん速い選択になります。

迷っている人は、各シリーズの工業簿記のほうを見比べてください。目次のあとの最初の30ページで、原価の流れをどう見せているかが分かります。

①みんなが欲しかった!簿記の教科書(TAC出版)——図解でじっくり理解したい人へ

フルカラーで図が大きく、「なぜそうなるのか」を丁寧に追うタイプです。工業簿記では原価の流れを図で繰り返し見せてくれるので、地図を持ちたい人と相性がいいと言えます。そのぶんページ数は多めです。




②スッキリわかる 日商簿記2級(TAC出版)——テンポよく1周したい人へ

テキストと問題集が1冊にまとまった構成で、説明は要点を絞ったテンポの良い進み方です。とにかく早く全体を1周して、あとは問題演習で回したい人向け。3級の勉強法で書いた「解く→戻る」の進め方は、2級でもそのまま使えます。




③パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級(翔泳社)——イメージから入りたい人へ

取引のイメージを漫画で見せてから解説に入るスタイルです。工業簿記は抽象的になりがちなので、「工場で何が起きているのか」を絵で押さえられるのは強みです。連動する仕訳アプリもあり、通勤時間を演習に使えます。




買う前の注意:必ず最新年度版を選ぶ

3級の記事でも書きましたが、2級ではさらに重要になります。

商工会議所の公式ページには、「毎年度4月1日現在施行されている法令等に準拠して出題します」と明記されています。つまり法令や会計基準が変われば、出題も変わります。

2級は3級より上位の論点を扱うぶん、改定の影響を受けやすい階層にあります。フリマアプリで数年前の版を安く買うと、今は出ない論点を勉強したり、逆に今は出る論点が載っていなかったりします。ここは節約するところではありません。

なお2級もネット試験(CBT方式)で通年受験でき、最新版はその形式にも対応しています。電卓の持ち込み規定は3級と同じなので、電卓の選び方もあわせて確認しておくと安心です。

最後に正直なことも書いておきます。2級は独学で受かる人が多い一方、工業簿記で完全に止まってしまう人もいます。テキストを2周しても地図が描けないなら、そこだけ人に聞くほうが速いこともあります。通信講座は、その1点のために使う道具だと考えて構いません。

2冊が決まった日から、試験までの景色

——今までのあなた。ネットで「簿記2級 テキスト」と調べては、比較記事を何本も開いて閉じている。どれも良さそうに見えて、決められない。買っていないので、当然まだ1ページも進んでいない。

そこから先のあなたは、こうなります。

机の上に2冊が並んでいます。同じシリーズの、商業簿記と工業簿記。工業簿記の最初の30ページを読み比べて、自分で選んだものです。

工業簿記を開いて、白紙にこう描きながらつぶやきます。

「材料と賃金が仕掛品に入って、製品になって、売れたら売上原価。——この本、その順番で書いてくれてる」

選ぶのに使った時間は30分。ですがその30分は、この先2〜3ヶ月ずっと効きます。合わない本で200時間走るより、合う本を30分で選んだほうが速いのは、計算するまでもありません。

今日、工業簿記のほうを3冊ひらいてください

最後に、今日できることを書きます。

書店でもネットの試し読みでも構いません。3シリーズの「工業簿記」だけを開いて、最初の30ページを見比べてください。商業簿記は見なくていいです。

見るポイントは1つだけです。

  • 原価の流れ(材料・賃金 → 仕掛品 → 製品 → 売上原価)が、図で示されているか。示されているとして、その図が自分にとって読みやすいか

読みやすいと感じたシリーズが、あなたの1冊です。決まったら同じシリーズの商業簿記も一緒に買ってください。これで買い物は終わりです。

もう一度だけ書いておきます。

テキストは2冊。決め手は、工業簿記。

2級で落ちる人の多くは、頭が悪かったわけでも、時間が足りなかったわけでもありません。差がつく科目を、差がつかない基準で選んでしまっただけです。あなたは今日、そこを外さずに選べます。


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参考文献・出典

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