PMPの更新が近づいてきて、費用を調べます。すると、だいたいどのページにも同じことが書いてあります。
PMI会員なら60ドル、非会員なら150ドル。
90ドルの差です。日本円にすれば1万円を超えます。それなら会員になったほうがいいに決まっている——そう読める書き方をされています。
ですが、この比較には決定的なものが入っていません。会員でいるための会費です。
この記事でお渡しするのは、更新料の金額そのものではありません。会員になるべき年と、ならなくていい年を、自分で判別する物差しです。
会員は、入りっぱなしにしない
覚えるのはこれだけです。
会員は、入りっぱなしにしない。使う年だけ入って、用が済んだら抜ける。
PMIの会員費は、更新料の割引券ではありません。会員でいる1年に、会員価格で何を買うか——そこが決まっている年だけ入ればいい。決まっていない年の会費は、ただの固定費です。
そう言い切れる理由を3つ挙げます。
根拠1:金額を確かめる場所は、実は公式サイトではない
まず、多くの記事が書いていないことから始めます。
60ドル・150ドルという金額は、PMIの公式サイトのどこにも書かれていません。
PMIが公開している最新のCCRハンドブックには、金額の代わりにこう書かれています。
更新料は会員資格と地域別価格の対象となります。最新の価格については、myPMIダッシュボードにログインし、「Renew Certification」をクリックしてください。
ここから2つ分かります。
- 会員割引は公式に存在する(「会員資格の対象となる」と明記されている)
- ただし金額は地域によっても変わるので、日本から更新する人が海外の記事と同じ額とは限らない
つまり正解はあなたのダッシュボードの中にしかありません。この記事を含めて、外から書かれている金額はすべて参考値です。まずログインして、自分の更新料を見てください。話はそれからです。
そのうえで、広く言われている60ドル・150ドルを仮に使って計算してみます。差額は90ドル。対して、PMI本部の年会費は129ドル(初回のみ入会金10ドル)。日本支部にも入るなら、さらに年50ドルが乗ります。
| 選び方 | 3年間に払う額(目安) |
|---|---|
| 非会員のまま更新する | 約150ドル |
| 更新する年だけ会員になる | 129+60=約189ドル |
| 本部会員を3年続けて更新する | 129×3+60=約447ドル |
| 本部+日本支部を3年続けて更新する | (129+50)×3+60=約597ドル |
いちばん節約した入り方——更新する年だけ会員になる——でさえ、非会員より約39ドル高くなります。
理由は単純です。割引額(90ドル)より、会費(129ドル)のほうが大きいからです。この関係がひっくり返ることは、まずありません。
更新のためだけに会員になるという選択は、どう計算しても損になります。
根拠2:会員が得になる年は、はっきり決まっている
では会員になる意味がないのかというと、そうではありません。得になる年が、明確に存在します。
ひとつは受験する年です。PMP試験の受験料は、一般に会員405ドル・非会員555ドルと言われています。
| その年にやること | 会員価格 | 非会員価格 | 差額 | 会費129ドルと比べると |
|---|---|---|---|---|
| PMPを受験する | 405ドル | 555ドル | 150ドル | 得(差額のほうが大きい) |
| 更新するだけ | 60ドル | 150ドル | 90ドル | 損(会費のほうが大きい) |
受験する年は、差額150ドルが会費129ドルを上回ります。だから受験のタイミングで入会するのは理にかなっています。再受験も会員275ドル・非会員375ドルと言われているので、同じ関係が続きます。
もうひとつは、会員価格でPDUをまとめて取る年です。
PMI日本支部のような支部のイベントには、会員価格があります。年に一度のフォーラムのような場は、一度の参加でまとまったPDUが取れるので、そこを狙う年は会費を払う意味が出てきます。
並べてみると、判断はきれいに分かれます。
- 受験する → 入る
- 会員価格のイベントでPDUをまとめて取る → 入る
- 更新するだけ → 入らない
- PDUを読書など無料の手段で積む → 入らない
最後の項目については、PMPのPDUの稼ぎ方|60 PDUは、ビジネス書5冊分の読書時間だったで詳しく書きました。60 PDUを読書だけで埋めるつもりなら、会費を払う理由はほとんど残りません。
根拠3:会費は「割引券」ではなく「仕入れ値」
ここまでの話を、ひとつの言い方にまとめます。
会費は、割引券ではありません。仕入れ値です。
割引券だと思うから、「90ドル安くなるなら入ろう」という判断になります。ですが実際に起きているのは、129ドルを先に払って、会員価格という仕入れルートを1年間ひらいておくという取引です。
仕入れるものがある年は、元が取れます。受験料で150ドル浮かせるなら取れる。会員価格のフォーラムでPDUをまとめて取るなら取れる。けれど仕入れるものが決まっていない年は、ルートを開けておくだけでお金が出ていきます。
ウォーレン・バフェットの有名な言葉があります。
価格とは支払うもの、価値とは得るもの。
会費という価格は、毎年同じです。変わるのは、その年にあなたが受け取る価値のほうです。だから毎年、同じ判断をする必要はまったくありません。入る年と入らない年があっていい。というより、あっていいどころか、あるべきです。
補足:お金まわりで、公式が決めている3つのこと
判断とは別に、事実として押さえておくべきルールが3つあります。いずれもPMIの公式ハンドブックに書かれているものです。
- 更新料と会員費は別物 — ハンドブックにわざわざ「会員更新料は、更新料とは異なる別のものである」と注記があります。会員費を払ったから更新も済んでいる、ということはありません
- 支払い期限はサイクル終了日から90日以内 — 60 PDUを満たせばサイクルの途中いつでも更新できますが、支払いの締切だけは決まっています
- PDUの証拠はサイクル終了後18か月保管 — 監査は無作為に選ばれます。当たった場合、申請したPDUの裏づけ資料の提出を求められます
3つ目は特に、読書でPDUを積んでいる人に関係します。読んだ本と読書メモは、更新が終わってからも1年半は残しておいてください。
「今年は何を仕入れる年か」で決めると、費用の見え方が変わる
——いまのあなた。
更新のページで60ドルと150ドルを見比べています。90ドルの差が気になって、会員登録のボタンに手が伸びかけています。
——判断の物差しを持ったあなた。
まずmyPMIを開いて、自分の更新料を確かめます。そのうえで考えるのは金額ではなく、この1年で会員価格を使う予定があるかどうかだけです。
今年は更新するだけだな。じゃあ入らなくていい。
——迷う時間が、まるごと消えます。
少し、私自身の話をさせてください。
私が会員になったのは、PMPを受験するタイミングでした。受験料が会員価格になるので、そこは迷いませんでした。根拠2の表でいえば、いちばん上の行です。
そのあとも会員のままでいて、PMI日本支部の年次フォーラムに2回参加しました。会員価格で、2回あわせて1万円ほど。ここで23 PDUを取りました。会費を払っている意味が、いちばんはっきりしていた時期です。
そして2026年1月、本部・支部とも更新しませんでした。理由はひとつです。
会費が高く、費用対効果が得られないと思ったから。
PDUは必要なぶんを取り終えていました。次に会員価格で買いたいものも、特にありませんでした。それなら払う理由がない——それだけの話です。やめたことを後悔してはいません。いまは非会員のまま、残りのPDUを読書で積んでいます。無料ですから、会員である必要がないのです。
入って、使って、抜けた。会員資格は、そういう使い方をしていいものだと思っています。
次の1年で、会員価格で買うものを書き出してください
最後に、5分でできることを書きます。
紙でもメモアプリでも構いません。これから1年のあいだに、会員価格で買う予定のあるものを書き出してください。
受験、再受験、支部のフォーラムやセミナー、有料の教材。1つも書けなかったら、その年は入らなくていい年です。
すでに会員で、書き出しても何も出てこなかった場合はこうします。
- myPMIで自動更新をオフにする — 本部と支部は別々の設定なので、両方切る必要があります
- 切るなら更新日の前に — 会費は返金されません。引き落とされてからでは遅いということです
- 期限が来れば、そのまま会員資格が切れる — 退会の申請書のようなものは要りません
私も自動更新を止める方法でやめました。正直なところ、これで合っているのか少し不安でしたが、PMIの案内にも自動更新はいつでも解除できると書かれています。この方法で問題ありません。
そして、抜けたあとに気が変わっても大丈夫です。受験する年が来たら、また入ればいいだけです。会員資格は一度きりの切符ではありません。
もう一度だけ書いておきます。
会員は、入りっぱなしにしない。
更新料をいくら値切るかではなく、その年に何を仕入れるか。そこだけ決めれば、この判断は毎年5分で終わります。
あわせて読むと、PMPの維持が楽になる記事:
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参考文献・出典
- PMI “Maintain Your Certification”(更新料・CCRハンドブック) https://www.pmi.org/certifications/certification-resources/maintain
- PMI日本支部「PMP資格の更新について」 https://www.pmi-japan.org/pmp_license/renewal/

