危険物乙4の難易度|本当の壁は化学じゃなく法令だった

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危険物乙4のテキストを開くと、引火点や発火点といった数値、聞き慣れない化学用語や計算問題が並んでいて、「化学、苦手だったし無理かも……」と勉強を始める前から気持ちが重くなっていませんか。

実は、乙4で本当に手強いのは化学ではありません。この記事では、化学系大学出身で乙4を取得し、その後本命の甲種まで取った実体験から、乙4の本当の壁がどこにあるのかをお伝えします。

化学の専門用語や計算式に、勉強前から身構えていませんか

乙4は「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎化学」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の3科目で構成され、各科目60%以上の得点で合格します。合格率はおおむね30〜40%台で、資格試験としては決して簡単な部類ではありません。

この数字と「化学」という科目名を見て、多くの人が「理系じゃないと厳しいのでは」と身構えます。ですが、実際に苦労するポイントは、化学が得意な人でも意外なところにあります。

ここで、配点を具体的に見ておいてください。出題は法令15問・物理化学10問・性質消火10問の計35問です。各科目60%以上ということは、法令は15問中9問を正解しなければなりません。落とせるのは6問まで。

そして科目ごとに足切りがある以上、「法令は捨てて他で稼ぐ」という戦略は使えません。いちばん問題数が多い科目から、逃げ道が塞がれているということです。

解決策:本当の壁は法令。化学が得意な人でもここでつまずく

乙4で本当に手強いのは法令です。法令は単純な暗記だけでなく、条文を具体的な場面に当てはめて考える「応用力」が問われるため、化学の得意・不得意に関係なく、誰もが同じ壁にぶつかります。

化学が苦手な人にとって、物理・化学や危険物の性質の科目に努力が必要なのは事実です。そこは正直に時間をかけるべきところです。ただし、「化学さえ乗り越えれば安心」ではありません。法令という関門は、化学の実力とは関係なく全員に平等にやってきます。つまり、化学が苦手だからといって、自分だけが不利なスタートラインに立っているわけではないのです。

そもそも「法令」では何を勉強するのか

「法令が壁」と言われても、中身が見えないと身構えようがありません。乙4の法令で扱う主な項目を並べると、こうなります。

  • 指定数量と倍数(どれだけ置いたら規制の対象になるか)
  • 製造所等の区分(製造所・貯蔵所・取扱所の種類)
  • 保安距離と保有空地(周囲からどれだけ離すか、空けるか)
  • 許可・届出の手続き(誰に、いつまでに出すか)
  • 免状(交付・書換え・再交付)と保安講習
  • 定期点検(対象、頻度、記録の保存)
  • 消火設備(種類と所要単位)
  • 運搬と移送の基準

並べてみると、壁の正体が半分見えてきます。互いにあまり関係のない制度が、8つも横に並んでいるのです。

物理化学や危険物の性質は、知識が積み上がっていく科目です。前に覚えたことが次の理解を助けてくれます。ところが法令にはその積み上がりが働きません。免状の規定を覚えても、定期点検の問題は1問も解けるようになりません。

覚える量そのものより、この「バラバラさ」が効いてきます。しかも項目ごとに、細かい数値や日数がついて回ります。

法令が本当の壁だと言える3つの根拠

根拠①:法令は暗記でなく「当てはめる力」が問われる

乙4の法令問題は、条文をそのまま覚えていれば解けるわけではなく、具体的な状況に規定を当てはめて判断する応用問題が中心です。丸暗記だけに頼る勉強法では、言い回しを変えられた問題や応用問題に対応できません。これは化学のように知識量で押し切れる科目とは性質が異なり、化学が得意な人ほど「暗記でなんとかなる」という前提が崩れて戸惑いやすい部分です。

具体例を1つ挙げます。「運搬」と「移送」です。

日本語としてはほとんど同じ意味に見えますが、法令上はまったく別の規制がかかります。

  • 運搬=危険物を容器に入れて車両で運ぶこと。容器や積載方法の基準がかかる
  • 移送移動タンク貯蔵所(タンクローリー)で運ぶこと。危険物取扱者が乗車し、免状を携帯していなければならない

ここが法令らしいところです。「運搬」「移送」という二つの単語を覚えても、問題は解けません。問題文は「タンクローリーで運ぶ場合」「ドラム缶を積んで運ぶ場合」といった場面で聞いてきます。目の前の状況がどちらに当てはまるのかを判断できて、はじめて点になります。

化学の知識は、ここでは1ミリも助けてくれません。

根拠②:意味づけて理解した知識ほど、応用問題に強くなる

心理学者クレイクとロックハートが提唱した「処理水準効果」という考え方があります。情報をただ表面的に繰り返し覚えるより、意味を理解しながら深く処理した情報のほうが記憶に残り、応用も利きやすいというものです。法令を丸暗記でやり過ごそうとすると応用問題でつまずきますが、「なぜこの規定があるのか」を理解しながら覚えると、初見の事例問題にも対応しやすくなります。

先ほどの運搬と移送も、この見方で整理できます。タンクローリーは、いったん漏れれば被害が桁違いに大きい。だから運転席に有資格者を乗せる。そう理解しておけば、「移送のとき免状は必要だったか」を思い出す必要すらなくなります。

根拠③:資格情報サイトの多くが「法令が一番苦手」と伝えている

危険物乙4に関する複数の資格情報サイトや合格者の体験談でも、3科目のうち「法令」が最も苦手とされる科目として挙げられています。次に苦手とされるのが物理・化学で、文系出身者にはこちらがハードルになりやすい一方、法令はどんな背景の受験者にとっても重箱の隅をつつくような問題で理解が難しく、丸暗記だけでは応用問題に対応できないと指摘されています。化学のバックグラウンドがあるかどうかに関わらず、法令が壁になりやすいというのは私個人の体験に限った話ではないということです。

ただし、法令の中に一つだけ性質の違う場所がある

ここまで「法令は読んで当てはめる科目だ」と書いてきました。ひとつだけ、例外があります。

指定数量です。

指定数量の問題は、解釈も場面の想像も要りません。貯蔵量を指定数量で割って、足す。それだけで答えが確定します。法令の中で唯一、手が決着をつけてくれる場所です。

そして性質が違うということは、勉強のやり方も変えていいということです。ほかの項目のように「なぜこの規定があるのか」と考え込むより、問題を繰り返して手を慣らすほうが早く着きます。私自身、法令でいちばん覚えられなかったのがこの指定数量でしたが、最後は理屈ではなく反復で抜けました。

詳しいやり方は危険物乙4の指定数量の覚え方にまとめてあります。複数品目の倍数計算や、水溶性で倍になるところでつまずいているなら、そちらを先に読んでください。

試験当日、「化学より法令の方が手強かった」と気づく瞬間

これは私自身の体験です。私は化学系の大学を卒業しているため、危険物の性質や基礎化学の科目には勉強前からほとんど抵抗感がありませんでした。ところが、法令だけは別でした。数値や手続きの細かい規定を覚えるだけでなく、「このケースではどの規定が適用されるか」を考えて答える問題に、化学の知識は何の役にも立たず、最後まで苦戦していました。

それでも、法令の条文を「どんな場面で使うか」を意識しながら読み直すうちに、応用問題を解いていて、ふとこう思うようになりました。

「あれ、化学より苦戦していた法令の問題が、意外と読めるようになってきたぞ」

私自身、乙4は平日2時間(通勤中にテキストを読む)、休日2時間(問題を解く)を2ヶ月続けて合格しました。会社の推奨資格だったことに加え、本命だった甲種の試験日までに時間があったため、試験の雰囲気や問題傾向を知る目的で先に乙4を受けたという経緯です。

化学が苦手だからと言って乙4を諦める必要はありません。むしろ法令という共通の壁を先に意識しておけば、当日「思っていたのと違う場所で苦労した」と慌てることもなくなります。

今日できること:法令の条文を「どんな場面で使うか」で読んでみる

テキストを開いたら、法令の条文をそのまま暗記しようとする前に、「これはどんな状況で問題になる規定か」を1つずつ考えながら読んでみてください。丸暗記ではなく場面をイメージしながら読むだけで、応用問題への耐性が変わってきます。

やり方を1つだけ具体的にしておきます。条文を読んだら、「誰が・何を・どうなったときの話か」を、自分の言葉で一行に言い直してください。

たとえば移送の規定なら、「タンクローリーで運ぶとき、資格を持った人が乗っていなければならない」。これで十分です。一行に言い直せない条文は、まだ場面が見えていないということなので、そこに戻ればいい。読み終えたページのうち、言い直せなかった項目だけが復習の対象になります。

化学の不安に気を取られて後回しにしがちな法令こそ、今日から意味づけながら読む練習を始めてみましょう。


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参考文献・出典

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