簿記2級の挫折ポイント|「間違いは、まだ身についていない知識」と数え直す

簿記・FP

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「簿記2級 挫折」と検索して、ここにたどり着いたのだと思います。

検索候補には「挫折率」「挫折しそう」「挫折した」が並びます。つまり、同じ場所で止まっている人がそれだけいるということです。

おそらく、今はこういう状態ではないでしょうか。テキストは一通り読んだ。問題集も解いている。なのに——

何ヶ月やっても、正答率が上がらない。

ここで多くの人が、ある読み違いをします。正答率が動かない=自分には向いていない、という読み違いです。

先に結論を書きます。それは向き不向きではありません。間違いの数え方が違うだけです。

間違いは「失点」ではなく、まだ身についていない知識のリスト

この記事でお渡しするのは、一つだけです。

これは、まだ身についていない知識。

問題集で間違えたとき、そう言い直してください。それだけです。

言い換えただけで何が変わるのか、と思われるかもしれません。変わるのは数えているものが変わることです。

「失点」として数えると、間違いは自分の能力の評価になります。10問間違えたら、10回ダメ出しをされたことになる。これを何ヶ月も続ければ、誰でも手が止まります。

「まだ身についていない知識」として数えると、間違いはこれから潰す項目の在庫になります。10問間違えたら、やることが10個見つかったことになる。同じ10問なのに、次の行動が変わります。

そして簿記2級の場合、この数え直しには根拠があります。在庫が有限だと、数字で確認できる試験だからです。

根拠1:合格に満点は要らない。だから在庫は数え切れる

簿記2級の配点は決まっています。

  • 商業簿記:第1問20点+第2問20点+第3問20点=60点
  • 工業簿記:第4問28点+第5問12点=40点
  • 合格ライン:100点満点中70点

ここから分かることが2つあります。

ひとつは、30点分は落としてよいということ。間違えた問題を1つ残らず潰す必要はありません。「全部できるようにならないと受からない」という前提そのものが間違っています。

もうひとつは、出題される論点の数は決まっているということです。試験範囲は公表されていて、テキストの目次がそのまま論点の一覧になっています。つまりあなたが潰すべき「まだ身についていない知識」は、無限に湧いてくるものではなく、目次の中に収まる有限のリストです。

数え切れるものは、減らせます。減っているのが見えれば、人は続けられます。

合格率も見ておきます。日商簿記2級のネット試験は、2025年4月〜2026年3月で受験141,072名中46,351名が合格、合格率32.9%でした。3人に1人という数字は決して甘くありませんが、裏を返せば1年で4万6千人以上が通過しているということでもあります。特別な人だけが受かる試験ではありません。

参考:簿記 受験者データ(商工会議所)

根拠2:間違えた直後こそ、記憶に残る(Metcalfe 2017)

「間違いを前向きに捉えよう」という話に聞こえたかもしれません。ここは精神論ではなく、研究で確かめられている部分です。

コロンビア大学のジャネット・メトカーフが2017年に発表したレビュー論文『Learning from Errors』(Annual Review of Psychology, 68, 465-489)は、間違いと学習の関係を整理したものです。

結論はこうでした。間違えたあとに正解を知る形の学習は、最初から正解だけを教わるより定着に有利である。そしてもう一つ、直感に反する発見があります。

自信を持って答えて間違えた項目ほど、強く修正されて記憶に残るのです(hypercorrection effect と呼ばれます)。「絶対こっちだと思ったのに違った」という驚きが、記憶を深く刻む方向に働くからだと説明されています。

これを簿記2級に当てはめると、景色が変わります。

自信満々で解いて外した問題は、いちばん痛い問題であると同時に、いちばん残りやすい問題です。正答率が上がらない時期というのは、その「痛い問題」を大量に発掘している最中ということになります。手応えがないのは、学習が止まっているからではありません。手応えが出るより前の工程を、今やっているだけです。

根拠3:印をつけないと、振り返りは残らない

ただし、間違いは放っておくと消えます。

解いて、答え合わせをして、「あーそうか」と思って、次の問題へ進む。この流れだと、間違いは在庫リストになりません。翌週にはもう一度同じ問題を間違えて、同じ「あーそうか」を繰り返すことになります。

教育学者のジョン・デューイの考え方として、よく知られた一節があります。

人は経験からではなく、経験を振り返ることから学ぶ。

間違えたこと自体は、まだ学習ではありません。振り返って初めて学習になる——そのために必要なのは、意識の持ち方ではなく、物理的に残すことです。

やり方は難しく考えなくて大丈夫です。問題番号の横に印をつける。それだけで、あなたの問題集は「まだ身についていない知識」の一覧表に変わります。次に開いたとき、印のところだけやればいい。2周目からは、印が消えていくのが目に見えます。

なお、テキストと問題集をどう往復するかという「順番」そのものについては、3級の勉強法の記事で書いた「解く→戻る」の考え方が2級でもそのまま使えます。この記事はその手前、続けられるかどうかの話に絞っています。

数え直したあとの、勉強の手ざわり

——今までのあなた。

問題集を閉じて、スマホで「簿記2級 挫折率」と打ち込んでいます。同じところで諦めた人の話を読んで、少し安心して、少し落ち込む。明日もう一度開くかどうかは、決めていません。

——間違いを在庫として数えるようになった、これからのあなた。

問題集を解き終えたら、答え合わせをして、間違えた問題に印をつけます。今日の印は8個。多いとは思いません。8個やることが見つかった、と思うだけです。そして2周目には、そのうち5個の印が消えます。

これは、まだ身についていない知識。

少し、私自身の話をさせてください。

正直に書いておくと、私は簿記2級を持っていません。この壁に出会ったのは、QC検定2級とPMPの勉強をしていたときでした。

どちらのときも、まったく同じ状態になりました。試験問題の正答率が、上がらなかったのです。勉強はしている。時間もかけている。それなのに数字が動かない。

私がやったことは、特別なことではありません。問題集を解きました。そして、間違えた箇所をこう考えるようにしました——これは、まだ身についていない知識なんだと。

そう考えたら、納得ができました。正答率が上がらないのは当たり前で、まだ身についていない知識がそこに残っているというだけの話だったからです。不思議なもので、納得できた途端に勉強する意欲が湧いてきました。

資格は違いますが、起きていることは同じだと思います。試験の種類が変わっても、「やっているのに数字が動かない」時期は必ず来る。そこで折れるかどうかを決めているのは、実力ではなく、間違いをどう数えているかです。

今日、印を8個つけてください

最後に、今日やることを一つだけ。

問題集を開いて、1セクションでいいので解いてください。そして間違えた問題の番号に、印をつけてください。

そのとき、減らそうとする対象を入れ替えます。

  • 減らすもの:× 正答率が上がらないという焦り
  • 減らすもの:○ 印の数

正答率は、自分では直接動かせません。けれど印の数は、1個ずつ確実に減らせます。そして印が減った結果としてしか、正答率は上がりません。

工業簿記で止まっているなら原価の流れの図から、差異分析で止まっているなら「単価のせいか、量のせいか」から。印のついた場所は、もう分かっているはずです。

挫折というのは、力尽きることではありません。進んでいるのが見えなくなることです。見えるようにすれば、あなたはまだ続けられます。

挫折しかけたときに戻ってくる場所になるのは、「何のために取るのか」です。そもそも資格でお金が増える道は2本あり、性質が正反対です。合格時に1回だけ出る一時金は年収に残らず、毎月の給与に乗る資格手当だけが積み上がります。簿記2級にどちらが出るのかを先に確認しておくと、ここで踏ん張る理由がはっきりします。 → 資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給

参考文献・出典

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