FP3級は意味ない?|「公的が先、民間はあと」を知るだけで、払いすぎが止まる

簿記・FP

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2026年8月から、高額療養費制度の自己負担限度額が段階的に引き上げられます(2027年8月には所得区分の細分化も予定)。この記事で触れる公的保険の給付内容は、これから変わっていく部分があります。だからこそ「そのつど自分で確かめられること」が大事になる、というのがこの記事の趣旨です。

「FP3級 意味ない」で検索して、ここにたどり着いたのだと思います。

正直に言います。言われている理由は、だいたい当たっています。

そのうえで私は、取ってよかったと思っています。理由は履歴書ではありません。新社会人のときに勧められるまま入った医療保険をやめて、月1万円が家計に戻ってきたからです。

「FP3級は意味ない」と言われる4つの理由

まず、批判されている中身を正面から並べます。ごまかしません。

  1. 合格率が高い。日本FP協会の試験だと学科・実技とも70〜90%台で推移しています。希少性はありません
  2. 問われ方が浅い。学科は〇×と三肢択一だけ。要点を押さえれば、ざっくりした理解でも解けてしまいます
  3. 転職や独立には直結しない。この資格だけで評価が変わる場面は、ほとんどありません
  4. 業種によっては見向きもされない。金融・保険・不動産以外の会社では、そもそも評価の対象外です

1〜3は事実です。4も、私のようなメーカー勤務の会社員には、そのとおりだと感じます。FP3級を取ったからといって、会社での評価は変わりませんでした。

ここまで読んで「じゃあ、やっぱり要らないな」と思ったなら、それは正しい判断です。仕事の評価のために取る資格としては、FP3級は弱い。

でも、この4つには入っていない使い道がひとつあります。

FP3級は「履歴書に書く資格」ではなく「払いすぎを止める資格」

この記事でお渡ししたいのは、これひとつです。

公的が先、民間はあと。

保険や貯蓄を考えるとき、多くの人はいきなり民間の商品から入ります。保険の窓口、職場に来る営業の人、ネットの比較サイト。どれも「どの商品を選ぶか」の話です。

でもその前に、健康保険や厚生年金が、すでにどこまで払ってくれるのかがあります。そこが埋まっていない状態で民間の商品を選ぶと、公的保険がカバーしている範囲を、もう一度お金を出して買うことになる。

FP3級は、この順番を教えてくれる資格です。合格して名乗るためではなく、順番を知るために通る。それが私の結論です。

根拠1:6分野の並びが、そのまま家計の判断の順番になっている

FP3級の出題範囲は6分野です。

  1. ライフプランニングと資金計画(健康保険・年金などの公的制度)
  2. リスク管理(民間の生命保険・医療保険)
  3. 金融資産運用(NISAなど)
  4. タックスプランニング(医療費控除などの制度)
  5. 不動産
  6. 相続・事業承継

気づくでしょうか。1に公的制度があり、2に民間保険がある。この並びは偶然ではありません。公的な土台を先に置いてから、その上に民間で足りない分を乗せる、という順番です。

しかも、ばらばらの分野に見えて、家計の場面では1本につながります。医療費が高額になったとき、①で学ぶ高額療養費制度と傷病手当金が効き、④で学ぶ医療費控除が効き、そのうえで②の民間保険がどれだけ要るかが決まる。3つの分野を横断して初めて、1つの判断ができる。

試験に受かるだけなら、この横のつながりは要りません。分野ごとに覚えれば6割は取れます。でも家計で使うなら、ここがすべてです。

ちなみに「合格率が高い=簡単」も、少し違います。FP3級は上位何%が受かる相対評価ではなく、6割取れば全員合格する絶対評価です(学科60問・実技20問、いずれも6割以上)。合格率が高いのは、難易度が低いというより、そういう設計だからです。希少性がないことと、内容が役に立たないことは、別の話です。

根拠2:公的保険は、たぶんあなたが思っているより払ってくれる

私がFP3級のテキストで一番驚いたのは、この3つでした。

高額療養費制度。医療費が高額になっても、ひと月の自己負担には上限があります。年収約370〜770万円の区分なら、現在は月8万円台が上限です(80,100円+医療費に応じた1%分)。100万円の医療費がかかっても、窓口で払う3割=30万円をそのまま負担するわけではありません。

傷病手当金。病気やケガで働けなくなったとき、休んだ4日目から標準報酬日額の3分の2が、支給開始日から通算1年6か月支給されます。「働けなくなったら収入ゼロ」ではないということです。

医療費控除。1年間に払った医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満なら、その5%)を超えた分は、所得から差し引けます。払った医療費の一部は、税金の形で戻ってくる。

この3つを知らないまま「入院したら大変だから」と民間保険を選ぶと、公的保険がすでに引き受けている部分に、もう一度保険料を払うことになります。知らないことが、そのまま毎月の支出になっていたということです。

出典:全国健康保険協会(高額療養費)同(傷病手当金)国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき

なお冒頭で触れたとおり、高額療養費の上限額は2026年8月から引き上げられます。公的制度は動きます。だから「今いくらか」を一度覚えて終わりにするのではなく、必要なときに自分で調べ直せる状態のほうが、ずっと価値があります。

根拠3:人は「入ったまま」を、自分では止められない

知識の話をもうひとつ。

サミュエルソンとゼックハウザーが1988年に発表した研究に、現状維持バイアスというものがあります(Journal of Risk and Uncertainty, 1, 7-59)。人は選択肢を比べるとき、今のままでいることを不当に選びやすいという偏りです。

この研究が面白いのは、実験室の中だけの話ではないところです。彼らは大学の教職員が実際に選んだ健康保険プランと退職年金プランのデータを調べ、そこにもはっきりと現状維持の偏りが出ていることを確認しました。保険は、まさに現状維持バイアスが出る場所だと、40年近く前に示されているわけです。

だから「なんとなく入ったまま10年経っている」のは、あなたが怠けているからではありません。人間の判断がそうできているだけです。

そして、この偏りを外から破るきっかけは、たいてい2つしかありません。ライフイベントか、知識です。前者は待つものですが、後者は自分から取りに行けます。

「公的が先、民間はあと」で考える人の家計

——今までのあなた。

保険証券がどこにあるかも思い出せない。新社会人のときに、先輩か営業の人に勧められて署名した。中身は覚えていない。毎月引き落とされているけれど、確かめるのが少し怖い。「まあ、何かあったときのために」でずっと止まっている。

——公的が先、民間はあと、で考えるようになったこれからのあなた。

保険証券より先に、給与明細を開きます。健康保険料の欄を見て、自分がすでに毎月いくら公的保険に払っているかを知る。そのうえで、高額療養費と傷病手当金が自分の場合いくらになるかを計算してみる。そして証券を開いて、重なっている部分を見つける。

これ、公的保険がもう払ってくれる分だ。

少し、私自身の話をさせてください。

私がFP3級を受けたのは、転職のためでも手当のためでもなく、お金の教養を身につけたかったからでした。税金と保険の話が、いつまで経っても他人事のままだったのが気持ち悪かったんです。

勉強していて手が止まったのが、さっきの3つ——高額療養費制度、傷病手当金、医療費控除でした。テキストを閉じて、新社会人のときに勧められて入った医療保険の証券を引っ張り出しました。読んでみると、公的保険と重なっている部分がかなりありました。

解約しました。月1万円、年間で12万円が家計に戻ってきました。受検料は学科と実技で8,000円です。

ただ、ここは正直に書きます。私は「医療保険を解約したほうがいい」と言いたいのではありません。必要な保障は、家族構成でも、貯蓄額でも、持病の有無でも変わります。私の場合は要らないと判断できた、というだけの話です。

「でも、解約していざというとき困らないの?」——そう思いますよね。私も思いました。

その不安に答えられるようになることが、この資格の中身です。困らないと判断できるから解約した。判断できなければ、続けるという結論でいい。大事なのは結論ではなく、自分で判断できる状態になることです。

今日、給与明細の「健康保険料」の欄を見てください

テキストを買うのは、そのあとで大丈夫です。

まず今日、給与明細を開いて、健康保険料の欄をひとつ見てください。あなたはすでに、毎月それだけの金額を公的保険に払っています。その払っているものが何を引き受けてくれるのかを知らないまま、民間の保険を選んでいませんか。

FP3級は、履歴書を強くする資格ではありません。合格率も高いし、会社での評価も変わらないでしょう。「意味ない」と言われる理由は、ほとんど当たっています。

それでも、公的が先、民間はあと。この順番ひとつを手に入れるために通る道としてなら、8,000円と数十時間は、悪い買い物ではないと思っています。

参考文献・出典

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