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FP3級に受かって、「せっかくなら2級まで」と書店に行きます。ところが棚の前で手が止まる。同じシリーズのテキストが、2つ並んでいるからです。
「2025-2026年版」と「2026-2027年版」。どちらにも最新版のような顔をした帯が巻かれている。ネットで調べれば「FPは必ず最新年度版を買え」と書いてある。ですが、その最新版が2つあるように見えるのだから、判断のしようがありません。
「FP2級 テキスト 2027」と検索して、次の版を待つべきか調べ始めた人もいるはずです。
結論から言います。この迷いは、テキストを比べても終わりません。決め手はテキストの側にないからです。
「最新年度版を買え」は、春先だけ通用しない
FPのテキストで最新年度版が必須なのは、そのとおりです。税制も社会保険も毎年変わるので、古い版で覚えた数字はそのまま不正解になります。ここは動きません。
問題は、「最新」がいつ切り替わるのかが書かれていないことです。
多くの資格では、年度版は4月に切り替わります。ところがFP技能検定は違います。切り替わるのは6月です。この1か所を知らないまま春先に買うと、2か月後に使えない本を持っていることになります。
逆に言えば、切り替わりの日さえ分かっていれば、迷いは1秒で終わります。
解決策:受験月を先に決める。そうすれば、買う版は1つに決まる
この記事でお渡ししたいのは、これひとつです。
先に受験日、あとでテキスト。
テキストを比べて選ぶのではなく、先に「何月に受けるか」を決めてください。受験月が決まれば、買うべき版は自動的に決まります。判断の余地はありません。
| 受験する時期 | 法令基準日 | 買う版 |
|---|---|---|
| 2026年6月〜2027年5月 | 2026年4月1日 | 2026-2027年版 |
| 2027年6月〜2028年5月 | 2027年4月1日 | 2027-2028年版(2027年5月ごろ発売) |
いま(2026年8月)に勉強を始めて、年内か来年の春までに受けるつもりなら、答えは2026-2027年版です。次の版を待つ理由はありません。待つ意味があるのは、受験が2027年6月以降になる人だけです。
「まだ受かるか分からないのに、受験日なんて決められない」と思うかもしれません。ですが決めるのは日付であって、合否ではありません。そして日付を決める作業は、あとで見るように、勉強そのものを進める効果もあります。
根拠①:法令基準日は6月に切り替わる。テキストの発売日がその証拠
まず制度から。日本FP協会は、CBT試験の法令基準日をこう定めています。
2025年6月~2026年5月実施分は2025年4月1日となり、以降も当年6月~翌年5月実施分は当年4月1日を法令基準日とします。
つまりFP技能検定の1年は、4月ではなく6月に始まります。6月から翌年5月までに受ける人は、全員が同じ法令基準日で出題されます。
この継ぎ目は、試験日程にもはっきり出ています。2026年度の休止期間は5月24日〜5月31日。年度末ではなく5月下旬に1週間の休みが入るのは、ここが問題の入れ替え地点だからです。
そして決定的なのが、主要テキストの発売日です。2026-2027年版の発売日を並べてみます。
| テキスト | 発売日 |
|---|---|
| FP2級・AFP 合格のトリセツ 速習テキスト(LEC) | 2026年5月16日 |
| みんなが欲しかった! FPの教科書2級・AFP(TAC) | 2026年5月22日 |
| 史上最強のFP2級AFPテキスト(ナツメ社) | 2026年5月26日 |
出版社も、シリーズも、著者も違うのに、全部が5月中旬から下旬に集まっています。そして休止期間が明けた6月1日から、新しい法令基準日の試験が始まる。
偶然ではありません。テキストは「6月から始まる1年」に合わせて作られています。「2026-2027年版」という2年をまたぐ表記そのものが、6月〜翌年5月というサイクルを表しています。年度をまたぐ名前になっているのは、試験の1年が年度と一致していないからです。
だから、5月にテキストを買う人は必ず2つの版を目にします。どちらも正しい版で、正しさが向いている相手が違うだけです。
根拠②:CBTになって、受験日は「決まっているもの」から「決めるもの」になった
次に、なぜこの迷いが最近になって生まれたのかという話です。
FP2級は2025年4月1日に、CBT方式へ完全移行しました。それまでは年3回の決まった日に、全国一斉で受ける紙の試験でした。いまは休止期間を除いて通年で、テストセンターの空いている日時から選んで受けられます。
ここで、受験者側の作業が1つ増えました。
紙試験の時代、受験日は与えられるものでした。1月・5月・9月のどれかしかないので、自分で決める余地はほとんどありません。だから「最新年度版を買う」という助言だけで足りていた。試験日が決まっていれば、対応する版も自動的に決まるからです。
ところが通年受験になったことで、受験日は自分で決めるものになりました。便利になった代わりに、「いつ受けるか」を決めないと「どの版か」も決まらないという状態が生まれた。ネット上の「最新版を買え」という助言が古びたのは、この制度変更のせいです。
あなたが棚の前で迷っているのは、情報収集が足りないからではありません。決めるべきことを、まだ決めていないからです。
根拠③:日付を先に決めた人は、実際に行動できる
「受験日を先に決める」には、版が決まる以外にもう1つ効果があります。
心理学者のゴルヴィツァーは1999年、実装意図という考え方を示しました。「いつか運動する」ではなく「水曜の朝7時に、家を出て公園を走る」のように、いつ・どこで・何をするかまで先に決めておくと、実行率が大きく上がるというものです。
これは思いつきの主張ではありません。2006年にゴルヴィツァーとシーランが行ったメタ分析では、94件の研究・8,000人以上を統合して、効果量d=0.65という中程度から大きい効果が確認されています。20年分の追試を束ねた数字です。
資格試験の申込みは、この「先に決める」を最も強い形でやる行為です。日付が入り、席が押さえられ、受験料が動く。受験日を決めるのは、版を決める作業であると同時に、勉強を始める装置でもあります。
順番を「テキストを買ってから、いつか申し込む」にすると、両方が動きません。買った版が正しいかも分からず、勉強を始めるきっかけも来ない。先に受験日、あとでテキスト。この順番には、理由が2つあるということです。
では、どの1冊を買うか
版が決まれば、あとはシリーズを選ぶだけです。定番は次の3系統で、どれを選んでも「テキストのせいで落ちる」ことはありません。
迷ったらTACの「みんなが欲しかった!」で構いません。FP3級でこのシリーズを使った人は、そのまま上がるのがいちばん速い選択です。図解の流儀が同じなので、2級で増える「深さ」だけに集中できます。
そしてFP2級では、教科書だけでは足りません。2級の実技は電卓で数字を出す計算問題の比重が上がるので、同じシリーズの問題集をセットで用意してください。学科60問・実技40問という量に、解く練習なしで挑むのは無理があります。
直前期に本番と同じ形式で通す道具として、予想模試もあります。CBTは画面で解く試験なので、紙とは体感が変わります。時間配分だけは、一度通しでやっておくと安心です。
動画と一緒に進めたい人はLECの「合格のトリセツ」です。YouTubeで解説動画を出している「ほんださん」と連携しているシリーズで、活字だけだと止まってしまう人に向いています。テキストで詰まった単元を動画で埋める、という進め方ができます。
1冊に情報を詰め込みたい人はナツメ社の「史上最強のFP2級AFPテキスト」。網羅性を優先した作りで、調べ物にも使えます。あれこれ買い足したくない人向けです。
どれを選ぶにしても、買う版だけは受験月で決めてください。シリーズは好みで選んで構いませんが、版は好みではありません。
2026年から変わることが、もう2つあります
受験日を先に決めるうえで、知っておいたほうがいい変更が2つあります。
1つめ。2026年4月1日の申込み分から、受検日時・会場の変更可能期間が短くなりました。これまでは最初に予約した日から最長1年間、変更ができました。いまは最長4か月(120日)です。「とりあえず遠い日で押さえて、あとでずらす」という使い方はしにくくなっています。決めるなら、本気の日付で決めてください。
2つめ。2027年3月から、3月の休止期間が短くなります。これまで3月は1か月まるごと試験がありませんでしたが、2027年は3月1日〜24日に試験が実施されます。年度末に受けたい人には選択肢が増えます。
いずれも、法令基準日が6月に切り替わるという大前提は変わりません。
版が決まると、勉強はここから動き出す
——今までのあなた。
書店の資格コーナー。同じ表紙の色違いのような2冊を、交互に手に取っています。奥付を見ても、どちらが自分に必要なのか分からない。スマホで「FP2級 テキスト 2027」と打ち込んで、読んでいるうちに20分が過ぎる。結局その日は買わずに帰る。
——受験月から決めるようになった、これからのあなた。
先に予定表を開きます。仕事の繁忙期を外して、「11月の第2土曜」と決める。そこで初めて棚に戻ります。
11月は6月より後だから、2026-2027年版。
迷う余地がありません。1冊を抜いてレジに向かうまで、3分もかからない。帰りの電車で申込みページを開いて、席を押さえます。買った時点で、日付と本が揃っている。
少し、私自身の話をさせてください。
私がFP3級を受けたのは令和4年で、まだ紙の試験の時代でした。受験日を決めてから、テキストを買っています。ただ、それは私が計画的だったからではありません。試験日が年に数回しかなく、決まった日程から選ぶしかなかったからです。順番が正しかったのではなく、制度が正しい順番を強制してくれていただけでした。
いまはその強制がありません。通年で受けられるということは、いつまでも受けないこともできるということです。だから今のほうが、先に日付を決める意味は大きいと思っています。
制度は変わりました。ですが正しい順番は変わっていません。変わったのは、その順番を自分で守らなければならなくなったことだけです。
今日、予定表を開くところから
やることは3つ、順番どおりにやってください。
ひとつめ。予定表を開いて、受験する月を決める。日付まで決められればなお良いですが、まずは月で構いません。FP2級の勉強時間は150〜300時間が目安なので、働きながらなら3〜6か月先を置くと現実的です。目安の考え方はFP2級の難易度と勉強時間にまとめています。
ふたつめ。その月から、買う版を確定する。6月〜翌年5月なら、その年の6月に始まった版。それだけです。
みっつめ。教科書と問題集を、同じシリーズで買う。3級で使ったシリーズがあるなら、まずそれを見てください。
テキスト選びで止まっている時間は、実は勉強時間の一部です。先に受験日、あとでテキスト。順番を入れ替えるだけで、今日のうちに1冊が決まります。
テキストを買う前に、もう1つ開いておくと良いものがあります。自分の会社の給与規程です。私がFP3級に受かったときは、一時金も資格手当も出ませんでした。FP技能士は国家資格ですが、会社に「置け」と命じる法律がないので、金額を決めているのは規程のほうです。 → 資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給
参考文献・出典
- 日本FP協会「FP技能検定について」(CBT試験・法令基準日) https://www.jafp.or.jp/exam/about/
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69-119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1

