基本情報技術者試験の難易度|分かれ目は業界ではなく、科目B

基本情報技術者の難易度 分かれ目は業界ではなく、科目B IT資格

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「基本情報技術者 難易度」で検索すると、正反対の話が並びます。

片方には「制度が変わって難易度が下がった」「合格率は50%近い」。もう片方には「文系には無理」「午後がとにかくきつい」。どちらも自信たっぷりに書かれていて、読むほど分からなくなります。

先に言っておくと、どちらも本当のことを言っています。ただ、どちらも「あなたにとっての難易度」には答えていません。

合格率という数字は、制度が変わるたびに跳ねる

まず「下がった」の根拠になっている合格率から見ます。IPAが公開している推移表の数字です。

年度 合格率 そのとき起きたこと
令和元年度 25.7% 旧制度・年2回のペーパー試験
令和2年度 48.1% CBT方式の導入
令和3年度 40.7%
令和4年度 37.4%
令和5年度 47.1% 科目A・科目Bへの再編
令和6年度 40.8%
令和7年度 38.3%
令和8年度(4〜6月) 37.7%

同じ形が、2回繰り返しています。制度が変わった年に跳ね上がり、そこから3年ほどかけて元の水準に戻る。

「難易度が下がった」と言われるときの47%は、新制度になった初年度の数字です。そこから毎年下がって、いまは38%前後。旧制度の25.7%よりは高いものの、47%だった頃とは別の試験だと思ったほうがいい。

つまり合格率は、試験の難しさより、制度がいつ変わったかを映している数字です。これで自分が受かるかを判断するのは、無理があります。

解決策:分かれ目は業界ではなく、科目B

この記事でお渡ししたいのは、これひとつです。

分かれ目は業界ではなく、科目B。

基本情報は「ITエンジニアの登竜門」と呼ばれるので、IT業界にいる人なら受かる、いない人には厳しい——と思われがちです。ですが公式データを見ると、そうはなっていません。

難易度を左右しているのは、業界でも学歴でもなく、科目B(アルゴリズムとプログラミング)を自分がやれるかどうかです。そしてそれは、いま何の仕事をしているかでほぼ決まります。

根拠①:同じIT業務でも、合格率は2倍違う

IPAは受験者が申込時に答えたアンケートをもとに、業務別の合格率を公開しています。令和8年度(4〜6月分)の社会人の数字です。

業務 受験者数 合格率
エンベデッドシステム開発 62 54.8%
プログラム開発 1,931 42.6%
システム設計 844 39.8%
データベース技術支援 105 36.2%
システム化戦略・企画・計画 616 35.4%
プロジェクト管理 571 32.9%
ネットワーク技術支援 306 28.4%
ITサービスマネジメント(運用) 780 27.7%
情報セキュリティ技術支援・管理・運用 490 22.4%

並べると、はっきりした線が引けます。上にいるのはコードを書く業務、下にいるのは運用・管理の業務です。プログラム開発の42.6%に対して、情報セキュリティの運用・管理は22.4%。同じIT業界の中で、2倍近い差がついています。

ここが大事なところです。情報セキュリティやネットワークの担当者は、間違いなくIT業界の人です。日々ITの仕事をしています。それでも合格率は2割台にとどまる。「IT業界にいるから有利」という説明は、この数字を説明できません。

逆の方向にも証拠があります。勤務先別で見ると、製造業が42.6%で、ソフトウェア業の39.9%、情報処理・提供サービス業の34.4%を上回っています。非IT系の業種にいるほうが不利、とも言えないのです。

業界の内か外かではなく、コードを追う仕事をしているかどうか。線はそこに引かれています。

根拠②:IPA自身が、科目Aだけを「外せる科目」にしている

制度の作りも、同じことを示しています。

いまの基本情報は2科目です。

  • 科目A……90分・四肢択一・60問。IT全般の基礎知識を広く問う
  • 科目B……100分・20問・全問必須。アルゴリズムとプログラミングが8割、情報セキュリティが2割

そしてIPAには科目A試験免除制度があります。IPAが認定した講座を受講して修了試験に合格すると、1年間、科目Aが免除されます。

ここに注目してください。免除できるのは科目Aだけです。科目Bを免除する制度は、どこにもありません。知識を問う側は他の手段で代替してよいが、コードを読む側は必ず本番で解け、と制度が言っている。

さらに令和5年度の再編で、もうひとつ変わりました。科目Bは擬似言語に一本化され、プログラム言語の選択がなくなりました。旧制度の午後試験では、Java、Python、C、アセンブラ、表計算から選べたのです。

とくに表計算は、プログラミングを本業にしていない人の現実的な選択肢でした。その逃げ道が、いまはありません。全員が擬似言語でアルゴリズムを解きます。

合格率の数字だけ見れば下がったように見える一方で、コードを書かない人にとっての壁は、むしろ高くなっている。冒頭の「下がった」と「文系には無理」が両方成立するのは、このためです。

根拠③:科目Bがきついのは、知識不足ではなく処理の問題だから

「勉強量を増やせば何とかなるのでは」と思うかもしれません。ここは正直に言うと、科目Bに関しては当てはまりにくいです。

心理学者のスウェラーは1988年、認知負荷理論を提唱しました。人間のワーキングメモリ(短期記憶)には厳しい容量制限があり、同時に処理しなければならない要素が多い課題ほど負荷が高くなるという考え方です。互いに関係し合う要素は、同時に頭の中に置いておく必要があるためです。

擬似言語の問題は、まさにこれです。変数がいくつあり、いまどの値が入っていて、ループが何周目で、条件分岐のどちらに入ったか——これらを全部、同時に頭の中に保持したまま1行ずつ進めます。

単語や制度を覚える科目Aとは、要求されている能力が違います。科目Aは知識の量、科目Bは処理の負荷です。だから、暗記の時間を増やしても科目Bの点は伸びにくい。伸ばすには、実際にトレースする回数を増やすしかありません。

科目Bを1問解いた先に、何が見えるか

——今までのあなた。

「基本情報 難易度」「基本情報 文系」「基本情報 やめとけ」。検索の言葉を変えながら、同じような記事を何本も読んでいます。合格率50%という数字を見て安心し、次の記事で「午後で心が折れた」という体験談を読んで不安になる。読むほど、受けるかどうかを決められなくなっていく。

——公開問題を1問解いてみた、これからのあなた。

IPAのサイトから科目Bの公開問題を開いて、紙とペンで1問だけ追ってみます。20分かかって、答えは外れました。でも画面を閉じたとき、頭の中にあるのは不安ではなく、具体的な言葉です。

「配列の添字を1つずらして数えていた。ここを丁寧にやれば届く」

難易度が、他人の合格率から自分の課題に変わっています。

少し、私自身の話をさせてください。

私は基本情報を受けていませんが、仕事で他人が書いたコードを読む必要に迫られたことがあります。1行ずつ追って、変数の値を紙に書き出していく作業です。

正直に言って、しんどかった。見落としがありました。自分では正しく追ったつもりなのに、コードと実際の動きが違う。どこで取りこぼしたのかを探して、また最初から追い直す。知識が足りなかったのではありません。追い続ける処理そのものが重かったのです。

だから、科目Bの合格率が業務によって2倍違うという数字には、実感として納得がいきます。あれを日常的にやっている人と、たまにしかやらない人が、同じ土俵で戦っているのですから。

ただ、これは裏返せば「才能ではなく、慣れの差」だということでもあります。日常的にやっている人が強いなら、やる回数を増やせば近づけます。

今日、公開問題を1問だけ解く

やることはひとつです。

IPAが公開している科目Bの公開問題を、1問だけ解いてください。無料で、今日できます。参考書を買う前で構いません。むしろ買う前のほうがいい。

見るのは正解したかどうかではなく、解いているあいだの感覚です。

  • 変数の値を追うのが面倒だが、できる——素直に進めて大丈夫です
  • 途中でどこを追っていたか分からなくなる——ここが伸びしろです。トレースの反復が対策になります
  • 問題文の日本語の時点で何を聞かれているか分からない——先にITパスポートを挟むほうが早いかもしれません

3つめに当てはまった人は、遠回りに見えてITパスポートから入るのを勧めます。基本情報の科目Aと範囲が重なるので、無駄になりません。テクノロジ系で手が止まったときの進め方はITパスポートの勉強方法にまとめています。

なお、科目Aの負担を減らしたい人には科目A免除制度という選択肢もあります。IPA認定の講座を受けて修了試験に合格すれば、1年間は科目Bだけに集中できます。ただし免除できるのは科目Aだけで、結局この記事の結論は変わりません。

合格率の記事をもう1本読んでも、あなたの難易度は分かりません。分かれ目は業界ではなく、科目B。1問解けば、今日それが分かります。

難易度と同じくらい気になるのが、受かったあとに何が返ってくるかだと思います。そもそも資格でお金が増える道は2本あり、性質が正反対です。合格時に1回だけ出る一時金は年収に残らず、毎月の給与に乗る資格手当だけが積み上がります。基本情報は会社に「置け」と命じる法律がない資格なので、どちらが出るかは会社の給与規程が決めています。 → 資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給

参考文献・出典

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