危険物取扱者の甲種を受けようと調べはじめて、最初にぶつかるのが「受験資格」ではないでしょうか。乙種や丙種は誰でも受けられるのに、甲種だけは条件を満たした人しか受けられない。そして条件の一番上に書いてあるのが「大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者」です。
ここで卒業証書に書かれた自分の学科名を思い出して、「うちの学科は化学系じゃないな」とページを閉じていませんか。その判断、まだ早いかもしれません。この記事では、消防試験研究センターの公式資料をたどりながら、学科名で外れた人が、それでも甲種を受けられる道をお伝えします。
甲種だけが、受ける人を選ぶ試験になっている
危険物取扱者試験のうち、乙種と丙種に受験資格はありません。年齢も学歴も実務経験も問われず、申し込めば誰でも受けられます。ところが甲種だけは違い、決められた条件のどれかを満たした人しか受験できません。
つまり甲種を目指すとき、最初の関門は勉強ではなく「自分は受けられるのか」の確認です。そしてここが厄介なところなのですが、多くの人はこの確認を、願書も証明書も見ないまま、卒業証書の学科名を思い出すだけで済ませてしまいます。
この確認を間違えて「受けられない」側に倒したとき、失うのは受験料ではありません。受けられたはずの何年かが、そのまま過ぎていきます。
解決策:学科名でダメでも、単位で入れる
甲種の受験資格には5通りの入口があります。そして学科名で外れても、大学等で化学に関する授業科目を15単位以上修得していれば、それだけで受験できます。この判定は自分の記憶ではなく、成績証明書という紙の上で決まります。
やることは、思い出すことではありません。数えることです。合言葉はこれだけ覚えてください。
学科名でダメでも、単位で入れる。
学科名は入口のひとつにすぎません。そこで外れたからといって、扉が閉まったわけではないのです。
学科名で降りなくていい3つの理由
理由①:ルートと「出す紙」が1対1で決まっている
消防試験研究センターの公式ページには、受験資格が次のように整理されています。公式の区分は〔1〕〜〔4〕の4つですが、〔3〕の乙種免状のルートだけが「実務2年」と「4種類」の2通りに分かれるので、実際の入口は5通りです。それぞれに「願書のどの欄に何と書くか」まで決められているのが特徴です。
| 受験資格 | 願書に書く略称 | 必要な証明書類 |
|---|---|---|
| 大学等で化学に関する学科・課程を卒業 | 大学等卒 | 卒業証明書、卒業証書、学位記(いずれも学科名が明記されたもの) |
| 大学等で化学に関する授業科目を15単位以上修得 | 15単位 | 単位修得証明書、または修得単位が明記された成績証明書 |
| 乙種免状の交付後、実務経験2年以上 | 実務2年 | 乙種危険物取扱者免状+乙種危険物取扱実務経験証明書(事業主等の証明) |
| 乙種免状を4種類以上取得 (第1類か第6類/第2類か第4類/第3類/第5類) |
4種類 | 乙種危険物取扱者免状 |
| 修士・博士の学位(化学に関する事項を専攻) | 学位 | 学位記等(専攻名が明記されたもの) |
この表で確認してほしいのは、どのルートにも「出す紙」が決まっていて、そこに解釈の余地がないということです。受験資格の有無は、あなたがどう思っているかではなく、その紙を用意できるかどうかで決まります。だからこそ、頭の中で「たぶん自分は無理だろう」と結論を出す場所は、そもそもどこにもないのです。
ちなみに、過去に甲種の受験を申請したことがある人は、そのときの受験票または試験結果通知書を提出することで、証明書類の代わりにできます。一度どこかで資格を認められていれば、二度目からは紙を取り直さなくていい、ということです。
理由②:15単位ルートは、想像よりずっと間口が広い
「15単位」と聞くと、化学を専門にしていた人だけの話に見えます。ところが公式のチェック表を読むと、その中身はかなり広く取られています。単位の数え方として、次の3つが認められているのです。
- 科目名に「化学」の字句が含まれる授業科目(例:化学工学、環境化学)
- センターのホームページに載っている「化学の授業科目(例)」と同じ科目
- 大学等が発行する「化学に関する授業科目の単位修得証明書」で認められる科目
そして、これらは組み合わせて合計15単位あればよいとされています。さらに3つ目については、公式のチェック表にこう明記されています。
大学が化学に関する分野と認めた授業科目は、すべて該当します。
つまり、化学と呼べるかどうかの最終的な判断は、あなたでも試験センターでもなく、単位を出した大学の側にあるということです。科目名がぴんと来なくても、大学が化学の分野だと認めれば、それは15単位の一部として数えられます。
もうひとつ、見落とされがちな条件があります。この15単位は、卒業・在学中・中途退学・通信教育のいずれであっても算定できるとされています。放送大学で修得した単位も同様です。大学を途中でやめた人も、いま在学中の人も、通信で学び直している人も、条件から外れていません。
15単位という数字も、1科目2単位で数えるなら8科目ぶんです。理工系や農学系、薬学系、あるいは一般教養で化学系の科目をいくつか取っていた人なら、成績証明書を広げて数えたときに届いていることは十分にありえます。
理由③:字面のトラップがあるから、自己判断が一番危ない
ここまで読むと「じゃあ科目名に化学と入っていればいいんだな」と思えますが、公式はそこにも但し書きを付けています。チェック表には、名称に化学の字句が含まれていても除かれる例として、学科では「人類文化学科」、科目では「進化学」が挙げられています。文字の並びとしては化学が入っていても、化学の分野ではないからです。
逆方向の但し書きもあります。例示された学科に似ていると思われる学科については、受験を予定している支部等へ問い合わせるようにと書かれています。境界線上にいる人は、自分で判定せず聞いてください、という設計です。
そして学科名で該当しなかった人に対して、公式のチェック表はご丁寧にこう案内しています。「化学に関する科目15単位以上修得(チェック表B)した受験資格での確認もご検討ください」。学科名で外れた人がそこで諦めることを、試験を実施する側が想定して、次の入口を示しているわけです。
字面だけで判断すると外れる例があり、似ていれば問い合わせろと言われ、外れたら別ルートを検討しろと案内される。この試験の受験資格は、受験者が自分の頭の中だけで結論を出す設計になっていないのです。
成績証明書に丸をつけながら数える、少し先のあなた
——今までのあなたは、甲種のページを開くたびに卒業証書の学科名を思い出して、「たぶん違うな」とタブを閉じていたかもしれません。受けたい気持ちだけが、行き場を失って残っていたはずです。
——成績証明書を取り寄せたこれからのあなたは、届いた紙を机に広げ、鉛筆を持って科目名を上から追っていきます。化学の字が入る科目に丸を付け、単位数を足していく。ちなみにこの丸を付ける作業は私の思いつきではなく、公式が「該当する教科と単位数に鉛筆等で丸印を付けてください」と指示している、実際の申請作業です。そして数え終えたあなたは、こう言っているはずです。
「なんだ、足りてるじゃないか」
少し、私自身の話をさせてください。私は化学系の大学を出ているので、受験資格は最初からありました。大学に卒業証明書の発行を頼み、即日で受け取って、それを添えて申し込んだ。それだけです。迷った場面はひとつもありませんでした。
だからこの点について、私は胸を張れる側ではありません。たまたま分かりやすいレーンに立っていただけです。ただ、そのおかげで断言できることがひとつあります。受験資格の確認そのものは、紙を1枚用意すれば終わる手続きだということです。何ヶ月も悩むような重さは、この作業のどこにもありません。重いのは、確かめないまま抱えている「たぶん無理だろう」のほうです。
今日できること:成績証明書を1通、申し込む
今日やることは2つだけです。
1つ目。出身校の証明書発行のページを開いて、成績証明書を1通申し込んでください。学科名で外れていると思っている人ほど、先にこれをやる価値があります。数えて足りていれば、あなたの受験資格は「15単位」で確定します。すでに化学系の学科を卒業している人なら、必要なのは卒業証明書1通です。
2つ目。願書の「甲種受験資格」欄に書く略称を、大学等卒・15単位・実務2年・4種類・学位の5つから1つ選んでください。ここが決まれば、用意する紙は自動的に決まります。受験の申し込みは書面でも電子申請でもできますが、令和10年度からは原則として電子申請のみになる予定なので、これから受ける人は電子申請に慣れておいて損はありません。
大学等での単位がどうしても届かない人には、乙種から積み上げる道が残っています。乙種免状を4種類(第1類か第6類、第2類か第4類、第3類、第5類)そろえるか、乙種免状を取ってから2年の実務経験を積むかです。この場合も、扉が閉まっているわけではありません。順番が変わるだけです。
学科名は、あなたが甲種を受けられるかどうかを決める唯一の基準ではありません。決めるのは、これから取り寄せる1枚の紙です。数えてみてから、降りるかどうかを考えてください。
あわせて読むと、危険物取扱者の対策に役立つ記事:
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受験資格を満たすために単位や実務経験を積むなら、その先に何が返ってくるのかも見ておいて損はありません。私の場合は一時金5,000円と、化学系物質を扱う責任者という役割でした。月額の資格手当はゼロです。消防法が会社に命じているのは危険物保安監督者を「定める」ことで、その要件は甲種または乙種+実務6か月。つまり選任するだけなら乙4で足ります。甲種にいくら払うかを決めているのは法律ではなく、会社の給与規程のほうです。 → 資格手当がない会社|もらったのは25万円、上がらなかったのは月給
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参考文献・出典
- 消防試験研究センター「甲種危険物取扱者試験の受験資格」 https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/qualified.html
- 消防試験研究センター「危険物取扱者試験 受験申請の手引き」 https://www.shoubo-shiken.or.jp/kikenbutsu/annai/application.html

